だれも買わない本は、だれかが買わなきゃならないんだ

だれも買わない本は、だれかが買わなきゃならないんだ

ご存知、都築響一さんの15年間の書評をまとめた本です。ここ何ヶ月か読んだ本の中で一番泣けたかなぁ。書評で泣けるというのは、結構すごいことなのではないかと思い、まずは最初に紹介したいと思います。
あの「珍日本紀行」や「夜露死苦現代詩」といった著書を出される方だけあって、都築氏の紹介する本は、本人曰く「なるべく取り上げられることの少ない本」「ベストセラー・リストにも平積み台にも縁の無い本」ばかり。しかし、それは決してクズ本、ではないのです。
大阪の梅田新道から東京日本橋まで全長550キロを往復し、道中見つけた手向け花をすべて撮影して写真集にした「国道1号線の手向け花」
価格が4600円、発行部数たったの1000部という、実は世界で二番目に長寿の月刊誌であり、世界に誇るべき美術誌「國華」
アインシュタイン博士の遺体解剖をした博士が衝動にかられて遺体の脳を取り出し、行方をくらます。数十年後、脳を隠匿したままの博士を探し出した若きジャーナリストの主人公が「タッパーウェアに入れた」脳みそといっしょにレンタカーでアメリカ横断の旅に出るという、ノンフィクション!「アインシュタインをトランクに乗せて」
見かけ上、ミシュラン社の発行する旅行ガイドに見える、ボスニア内戦当時のサラエボ包囲戦の最中に執筆された、当事者による戦場生活ガイドブック「サラエボ旅行案内:史上初の戦場都市ガイド」
思わず読みたくなってしまうような本のセレクションとその書評もすばらしいのですが、ここに紹介されている本を書いている、または作っている人たちの「本」というものに対する惜しみない愛情が思いがけず伝わってきて、私は読みながら泣いてしまいました。このような人々の想いのつまった「本」を売らせてもらっている本屋さんという仕事は、幸せな仕事なんだと思います。
この本の第一章は、都築氏がかつてEsquireで連載していた「書店探訪」が収録されているので、書店評になっています。取り上げられている書店は、福岡のキューブリック、広島のフタバ図書MEGA、和歌山のイハラハートショップ、京都のガケ書房アスタルテ書房鳥取本の学校今井ブックセンターと定有堂書店、大阪の波屋書房、など、書店業界では有名な15店舗。こちらも読み応えがあり、書店好きは必読と言っていいでしょう。
この本は、刊行記念で都築氏のサイン会&トークショーが三つの書店で開催されました。ABC六本木と三省堂の神保町本店という東京都心の大きな書店に加えてイベントが開催されたのは、何と人口わずか2200人しかいない山村にあるイハラハートショップ!神社の境内でイベントがおこなわれたのです。その写真がブログにアップされていましたが、その表情のすばらしいこと。
http://i-heart.blog.ocn.ne.jp/photos/uncategorized/2008/05/09/200854_071.jpg
http://i-heart.blog.ocn.ne.jp/blog/
大きなお店のイベントが霞んで見えてしまうくらい、輝いているように思えました。本当に「本」ってすばらしいと思える一冊でした。