石塚さん、書店営業にきました。

石塚さん、書店営業にきました。

出版社の営業の方向けのHowto本なのですが、実は優れた書店批評本でもあります。出版社の営業の方が、販売拠点である書店に対していかに効果的な営業をかけるかは、顧客である書店および書店員を攻略することが必須であるわけですが、書店および書店員の労働環境、行動パターン、発注する際の心理状態まで、事細かに分析されていて感心します。これは本当にここに書かれてあることその通りですよ。
章末ごとに挟まれる「書店業界あれこれ」の指摘も非常に鋭い。特に「書店人が仕事が出来ない理由」は全書店員に読んで欲しい内容だし、「人材が確保できない」「なぜ残業をするのか」「「余裕」について」は、書店の経営陣に読んで欲しい内容です。なぜ書店員三十歳定年説などという議論が幅を利かせてしまうのか、そしてこの事態を放置したら何が起こるのか、その未来像が見えることでしょう。就職先に書店員を志望されている方にも、三十前になってから後悔しないために、読んでおいてほしい内容です。

こうして非常に多くのアルバイトがやがて「本は好きだけれど将来本屋の社員にはなりたくない」という発言をするようになる。これは決して誇張ではない。紛れもない、事実である。優れた才能がほんの数年間書店を通過し、どこかへ去っていってしまうようになっている。
現在いる社員を苦しめているばかりか、将来の人材候補をも失い続けている。そんな業界の未来が明るいわけはないと、苦笑を通り越して失笑である。
(「人材が確保できない」より)

リアルすぎる………。社員になりたがらない優秀なアルバイトさん、実名で20人以上言えますよ、私も。
人材面でもデフレスパイラルに陥ってしまっている書店業界ですが、未来が明るいわけはないと失笑されてしまうような書店業界ですが、いつかその努力が報われるような未来を目指してがんばりたいと思っておりますので、みなさん全国の書店員を応援してあげてください。