主婦の友社、大日本印刷と業務・資本提携

http://www.tv-tokyo.co.jp/wbs/2009/05/f8-28.html
経営の苦境が伝えられていた主婦の友社がDNPに救われた格好?
それにしても、丸善ジュンク堂・TRCに続き、主婦の友社ということで最近の出版業界ニュースを賑わすDNPですが、狙いは何なのでしょうか?
先日のワールドビジネスサテライトでは、DNPの森野常務はインタビューにこう答えていました。
http://www.tv-tokyo.co.jp/wbs/2009/04/o1-104.html

「もう一回発想を切り替えて、この業界でわれわれがどんな役割を果たせるのか、試みてみようと思ったわけです」
「日本の強い競争力である知の源泉であるこの業界が、今のこの低迷した成熟化社会の中でものづくりだけじゃなくて、日本の知そのものが世界に発信する情報発信大国になるんじゃないか」

これだと何だか抽象的過ぎてよくわかりませんが、どうやらDNPは低迷している出版業界に対して何らかのソリューションを持っている、と主張しているように聞こえます。
では、そもそもDNPにはどんなことができるのか?なぜ印刷会社が出版業界に出資するのか?そのへんの背景をさぐってみましょう。まずはざっくりと、日本の印刷業界を俯瞰してみます。
印刷業界の動向・現状・ランキングなど-業界動向サーチ
面白いことに印刷業界の売上は右肩上がりなんですね。凸版とDNPが二強で激しいライバル関係。売上はDNPだけで1兆6000億円もあります(ちなみに雑誌書籍の売上は日本の全部を足しても2兆円)。両社とも世界的なハイテク企業なので、レベルが違うという感じがします。ただ売上が拡大している中、いわゆる出版物印刷という本業は出版業界に引きずられる形で縮小傾向のようです。DNPの決算書を見てみると、売上ベースでも営業利益ベースでも、出版印刷はまだ主力事業なので、ここが縮小していくというのは、やはり中長期的に見て苦しいのだと思われます。
となると、縮小が続く限られた出版印刷市場の仕事を、いかに凸版から差別化してシェアを奪っていくか、というのが、多分DNPにとっての大きな経営課題になるんだろうと思うのですが、さて、ここからは印刷業界の素人である私の想像。
現時点でほとんど実力が伯仲している凸版とDNPですが、DNPはシェアを一気に引き離す一発逆転の戦略として、丸善ジュンク・TRCを傘下にいれたのではないかと私は考えています。というのは、この3社には共通のキーワードが存在するからです。それは「図書館」です。
ご存知のとおり、丸善は書店小売部門よりも、教育学術部門(http://www.maruzen.co.jp/business/edu/solution_library.html)のほうが、売上も利益も高く、図書館関連の仕事が主力事業になっています。TRCは、図書館流通センターのその名のとおり、図書館用の書店ですし、ジュンク堂は「図書館のような書店」です。DNPは、書店を救うというよりも、まず図書館を押さえたかったのではないかと想像しています。なぜならDNPは、この「図書館」に、自社製品であるICタグでの管理システムを導入しようとしていると考えられるからです。
これはライバル会社である凸版のサイトに紹介されていた図書館用のICタグシステムの仕組です。
502 Bad Gateway
このICタグの技術に関しては、DNPのほうがどうやら凸版をリードしているようで、このICタグの自社フォーマットを事実上の業界標準にしようと本気でやろうとしているのではないかと思われます。
http://saiyo.dnp.co.jp/10/field/ic/ictag.html
ICタグはコストがネックとなって、導入が進んでいない技術の一つですが、DNPとしては自社開発した新しいICタグを、流通段階で後付するのではなく、印刷段階ですでに入れ込んだ形で出荷するという状態を最終的には狙っているはずです。そうなったら業界標準規格をおさえている者の圧勝で、シェアは一気にDNPに傾くことになるし、特許収入もバカにならないことになります。
ですが、現在の出版業界では風上も風下もまだ完全にアナログの状態。そこで丸善ジュンク・TRCを使って、比較的導入しやすい図書館での導入実績をまずつくり、そこから業界全体に広げていこうとしている戦略なのではないでしょうか。
まあこれも私の妄想にすぎません。ひょっとするとトンチンカンなことを言ってるのかも。実際DNPが本当は何を狙って出版業界に出資しているのか、そのあたりの事情にお詳しい方はぜひご教示いただきたいです。書店からすると印刷業界はもう別世界で、何がおきているのかわけがわけらない状態です。
いずれにしても、そのDNP本体にしても、2008年度は200億規模の赤字決算見込ですから、そんなに余裕がある状態ではないと考えられます。実際問題DNPに頼って一息ついている場合ではない気がしておりますので、ほんと、早く改革を進めないとやばいと思いますよ、この業界は。