DNPと出版大手三社がブックオフ株を取得!?

ブックオフ株を大日本印刷、講談社、小学館、集英社らが取得へ(海難記)
仲俣さんの記事で知って仰天!&新文化の続報。
講談社、小学館、集英社とDNPグループがブックオフ株式約30%を取得へ(新文化)
またしても筆頭株主としてDNPがここで登場しているんですが、今回の主役は出版大手三社ではないかと思われます。出版大手三社がブックオフ株を取得するために、まずブックオフとDNPの両方につながっている丸善に相談、丸善が影のフィクサーとなって、ブックオフの投資会社に話をもっていき、DNPに資金を出させたという構図っぽい気がします。DNPはICタグの件で若干のメリットはあるものの、ブックオフとなると自社の主業務と直接的なシナジーは生みにくいので、今回は出版大手に恩を売るという感じだったのではないかと推測します。
これによって、大手三社は、断裁していた返品余剰在庫を堂々とブックオフに売ることができるようになってしまいました。たとえば、講談社の場合、返品余剰で倉庫に滞留している本でも、絶版にするまで三年間置くという内規があって、断裁するまでの倉庫保管コストがかかっていたのですが、さっさと絶版にして新古本化し、ブックオフ900店舗の物流に載せることができるようになるということです。ちなみにブックオフでは新古本1タイトルにつき3000部は確実に販売することができるそうで、出版社の狙いとしては、一番がこれなんじゃないだろうか。そうだとすると八木書店http://www.books-yagi.co.jp/wsale/index.htm)やダイヤ書房(http://www.daiyashobou.com/)あたりのバーゲンブック業者には打撃になる話だと思います。
第二には、退潮が明らかになってきているコミックの売上に対する対策。ブックオフは書籍売上のうち平均で40%がコミックの売上です。しかもそのうち、30%は発売2年以内のタイトルなので、完全に競合している状況。今回株主になることで、この買取施策に何らかの制約をつけるようにもっていく(例えば発売半年以内のコミックは買取禁止とか)ようにしたり、例のブックオフの1億円騒動にあったような著作権者への還元を合法的にできるようにもっていく、という狙いがあるのではないかと思います。例によって妄想ですけどね。
ただ、仲俣さんが指摘しているように、

基本的には、既得権をもっている人たちの防衛的な施策にすぎないように思え、このことで本来の出版業界の改革は、むしろ遅れるのではないかと懸念する。

いまのところ、旧来の「出版流通システム」に依存している側からは、企業買収や系列化といった経営面での動きに終始し、消費者である読者に対しては目立った提案がなされていない。*4。となると、今回の大手出版社+大日本印刷によるブックオフ株取得は、ブックオフが「黒船」側によって買収されることへの、「旧幕派」からの先行的な防衛行為だったんじゃないか、とさえ勘ぐりたくなる。

という見方はおそらく正しい。
ついでに言うと、今回の話って、要は新刊書店抜きの流通を大手が始めますと宣言したようなもので、新刊書店が出版社から半分見捨てられたって話でしょ?というようにも捉えることができます。そういう意味では、驚いたと同時に、どうしようもなく憂鬱な気持ちになったことは事実。衝撃的すぎる…。
それはそれとして、朝一番に上の人に「えらいことがおきましたよ!」と報告したら「ごめん、それ知ってた」と過去形で返されてしまいました。最近業界(と会社)から取り残されている自分を感じます…。