本屋大賞

本屋に復帰したので頑張って読んでみようと思ったけど、『サラバ』と『怒り』は時間切れのため未読。無理でしたー。
一応その2作品を除いた分は読んだので、個人的に面白かった順に書いていきます。

世界を救うために、二人は走る。東京大空襲の夜、東北の蔵王に墜落したB29。公開中止になった幻の映画。迫りくる冷酷非情な破壊者。すべての謎に答えが出たとき、カウントダウンがはじまった。二人でしか辿りつけなかった到達点。前代未聞の完全合作。

誰が書いたとか、あまり気にしないで読んじゃいました。エンターテイメントにとことん特化した作品で、これは映像化しても面白いんだろうなあ、やはり主演はイノッチかなあ、などと想像しながらニヤニヤできる作品ではないかと。とにかく伏線小道具の使い方が上手く、強引でスピード感のある展開といい、私はこういうのが大好きなんだ、と声を大にして言いたい作品でした。ああ面白かった。
ただ、本屋大賞的には過去に同系統の『ゴールデンスランバー』が受賞しているので、そのへんを考慮すると微妙なのかもと想像。
評価A

強大な帝国から故郷を守るため、死兵となった戦士団<独角>。その頭であったヴァンは、岩塩鉱に囚われていた。ある夜、犬たちが岩塩鉱を襲い、謎の病が発生する。 その隙に逃げ出したヴァンは幼い少女を拾うが!?

上巻まで読んだときは、もしかすると守り人シリーズの上を行く面白さかもしれん、これは傑作!と大興奮だったのですが、ヴァンとホッサルが出会ってからの下巻の展開が惜しすぎました。<取り落とし>のような意外な展開は、無くてよかったんだけどなあということで、個人的には残念ながら2位です。でもこの作品は今までに無い「医療もの+ファンタジー」という2つのジャンルが奇跡的に融合した作品でありまして、上橋先生の圧倒的な筆力は今回も冴えに冴え渡っており、2014年を代表する大作であることは確か!
前にも書いたけど、これほどのクオリティのファンタジーが日本語で読めるというのは、本当に幸せなことだと思います。個人的にはに上橋作品のスケールは本屋大賞という枠はこえてるという気がするんですよね。
評価A

本屋さんのダイアナ

本屋さんのダイアナ

私の呪いを解けるのは、私だけ――。すべての女子を肯定する、現代の『赤毛のアン』。「大穴(ダイアナ)」という名前、金色に染められたバサバサの髪。自分の全てを否定していた孤独なダイアナに、本の世界と彩子だけが光を与えてくれた。正反対の二人だけど、私たちは一瞬で親友になった。そう、“腹心の友”に――。自分を受け入れた時、初めて自分を好きになれる! 試練を越えて大人になる二人の少女。最強のダブルヒロイン小説。

少女小説というジャンルはほぼ読んだこと無くて、『赤毛のアン』も『花子とアン』もそんなに好きじゃないし、正直期待していなかったのですが、いい意味で完全に裏切られました。これは…良かったよ。これほどまでに目から汗が出るような破壊力がある作品だとは・・・思ってなかったですわ。
まあ前半部で設定が見えてしまって、後半部の話の展開が予想できちゃうところとか、本屋さんが出て来るのは最後の最後の方なのであまりこのタイトルは適切じゃないよなあというところとか、ちょっとだけ気になった点はあるんですが、何かそういうのはどうでもよい、と思えてしまうくらい、心地よい読後感に浸れる作品。キャラが魅力的で、主人公2名のダブルヒロイン小説とあるけれども、影の主役ティアラを入れてあげてトリプルヒロイン小説といって欲しいですよね。
評価A−

ハケンアニメ!

ハケンアニメ!

伝説の天才アニメ監督王子千晴が、9年ぶりに挑む『運命戦線リデルライト』。プロデューサー有科香屋子が渾身の願いを込めて口説いた作品だ。同じクールには、期待の新人監督・斎藤瞳と人気プロデューサー行城理が組む『サウンドバック 奏の石』もオンエアされる。ネットで話題のアニメーター、舞台探訪で観光の活性化を期待する公務員…。誰かの熱意が、各人の思惑が、次から次へと謎を呼び、新たな事件を起こす!anan連載小説、待望の書籍化。

表紙CLAMPだし、アニメ業界にも興味ないし、本屋大賞ノミネートになってなかったら絶対読んでなかったと思う作品。でも予想に反して面白いんだなこれが…。本屋大賞ありがとう、読書の世界を広げてくれて。
王子監督の『運命戦線リデルライト』のイメージは、やはりあれなんですか、『少女革命ウテナ』の幾原監督なんですか、絶対運命黙示録なんですかね。あれは名作でしたね。
この作品、主人公3人の連作ですが、全員若い女性。微妙に厳しかったですが期待の新人監督・斎藤瞳と人気プロデューサー行城理の話が感情移入できたので気に入りました。3作品の後のラストのまとめ方が、まあ見事で、カタルシスを味わえます。
本屋大賞ノミネートには感謝するけれども、辻村さんにはこの作品じゃないタイトルで受賞して欲しい気がしてます。
評価A−

ここにヒーローはいない。さあ、君の出番だ。奥さんに愛想を尽かされたサラリーマン、他力本願で恋をしようとする青年、元いじめっこへの復讐を企てるOL…。情けないけど、愛おしい。そんな登場人物たちが作り出す、数々のサプライズ。

いかにも伊坂っぽい話でしたが、まあこういうのもいいよねという「ある小さな夜の作品」というこじんまりした印象の作品です。伊坂作品なのに泥棒や強盗、殺し屋や超能力、恐ろしい犯人が出てこなくて、恋愛がテーマというのは珍しいです。
ところで、話の中に出てくる「斉藤さん」の商売はJASRAC的にはどうなんですか。絶対著作権料払ってないよなあ。
評価B+

土漠の花

土漠の花

ソマリアの国境付近で、墜落ヘリの捜索救助にあたっていた陸上自衛隊第一空挺団の精鋭たち。その野営地に、氏族間抗争で命を狙われている女性が駆け込んだとき、壮絶な撤退戦の幕があがった。圧倒的な数的不利。武器も、土地鑑もない。通信手段も皆無。自然の猛威も牙を剥く。最悪の状況のなか、仲間内での疑心暗鬼まで湧き起こる。なぜここまで激しく攻撃されるのか?なぜ救援が来ないのか?自衛官は人を殺せるのか?最注目の作家が、日本の眼前に迫りくる危機を活写しつつ謳いあげる壮大な人間讃歌。男たちの絆と献身を描く超弩級エンターテインメント!

自衛官は人が殺せるのか?というテーマからの重い感じは受けなかったですね。実際そんな逡巡は途中からどっかに飛んでいってしまうし、どちらかというと、『キリングフィールド』的な世界観ではなくて『プライベートライアン』的な世界観で、異常に強い敵とのマッチョな戦闘描写を読ませたい作品なのかな、というのが私の印象です。貴志祐介さんの『クリムゾンの迷宮』のようなサバイバルエンターテイメント小説というジャンルが近いように思います。まあ、なので「泣ける」作品と言われてますが、そうでもなかったなあと。終わり方はとてもよかったですね。
評価B+

満願

満願

第27回山本周五郎賞受賞
2015年版「このミステリーがすごい! 」第1位
2014「週刊文春ミステリーベスト10」 第1位
2015年版「ミステリーが読みたい! 」 第1位
2014年のミステリー年間ランキングで3冠に輝いた、米澤ワールドの新たなる最高峰!
人生を賭けた激しい願いが、6つの謎を呼び起こす。人を殺め、静かに刑期を終えた 妻の本当の動機とは――。驚愕の結末で唸らせる表題作はじめ、交番勤務の警官や在 外ビジネスマン、美しき中学生姉妹、フリーライターなど、切実に生きる人々が遭遇 する6つの奇妙な事件。入念に磨き上げられた流麗な文章と精緻なロジックで魅せる、 ミステリ短篇集の新たな傑作誕生!

米澤さんと私の相性は悪いらしく、どの作品読んでも面白さがいまひとつよくわからないんですね。これまででも、ちょっと面白いかなと思ったのが『氷菓』ぐらいかも、ということで、この作品に収録されている6作品についてもすべてオススメしませんが、世間的な評価はすごいことになっているので、私の感性が世の中と相当ずれているのでしょう。残念なことです。
評価B

億男

億男

宝くじで3億円を当てた図書館司書の一男。浮かれる間もなく不安に襲われた一男は、「お金と幸せの答え」を求めて大富豪となった親友・九十九のもとを15年ぶりに訪ねる。だがその直後、九十九が失踪した―。ソクラテスドストエフスキーアダム・スミスチャップリン福沢諭吉ジョン・ロックフェラードナルド・トランプビル・ゲイツ...数々の偉人たちの“金言”をくぐり抜け、一男の30日間にわたるお金の冒険が始まる。人間にとってお金とは何か?「億男」になった一男にとっての幸せとは何か?九十九が抱える秘密と「お金と幸せの答え」とは?

昔、これとテーマも筋も同じようなお金の話を、アメリカの自己啓発小説で読んだのですが、そっちのほうが「お金と幸せの答え」については納得できる答えが書いてあったなあ、と思い出した次第です。そしてその本のタイトルを思い出せない自分に愕然としております。
評価C