本屋さんは何屋さんなのかわからなくなってきている
取次の営業さんが月2回くらい巡回に来られる。今月の売上は全国的にも惨憺たる数字になっていて、これは非常にまずいですね、となるのだが、コミックは人気連載も終わりましたし、去年は『火花』がありましたしねー、で今回もトークは終わってしまい、特に売上を改善する策があるわけでもないようであった。
営業さんが持ってきた7月の全国の書籍の売上上位タイトル一覧を確認してみる。
1位は池井戸さんの『陸王』。まあこれはともかくとして、5位に『NHK日本語発音アクセント新辞典』がランクインしていたのには驚いた。18年ぶりのロングセラー改訂版なのであるが、この辞典は使用する人と用途が限られた専門的な辞書であって、そんな爆発的に売れるような本ではない。これが5位とはよっぽど売れるものがないらしい。
旧版が売れていた頃を知らないらしいまだ若い営業さんは「何ですかねーこの本は」と困惑していた。
さて、そんな営業さんが今回
「なんか流行ってるらしいんですよ、これ」
といって提案してきた商材が「ベジッティ」であった。
「野菜をいれると麺のような形に切ってくれるらしいんですね。私は知らなかったんですが、関連書籍も出てるみたいです。どうでしょう。仕入れてみませんか?」
うーん・・・。
「じゃあこれ。前回も提案させていただいたんですが、「お手軽ぬか床キット」はどうでしょう。県内ではまだどこの店も展開してくれてないんですが、名古屋や大阪の店では売れているみたいですよ。どうでしょう。仕入れてみませんか?」
うーん・・・。
最近の取次営業さんの商談は半分がこんな感じである。そこに選書のセンスはすでに要求されておらず、もはや本屋さんなんだか何屋さんなんだか分からなくなってきている。
「そうですね。今の時代、本が売れませんからね。本来なら本の売上をあげるようなご提案をさせていただくのが筋なんでしょうが、本が売れないならほかのものを売るしかないので、最近はこういうのが本当に多くなってますね」
営業さんによると、売れる雑貨もあるけれども売れない雑貨は本当に売れなくて両極端であるとのこと。雑貨の良し悪しがわかる力量が無いと、これからの本屋さんでは厳しいらしい。