あおい書店中野本店
中央線沿線シリーズ第一弾は、中野でございます。愛知に本拠地があるくせに、そんな中野に本店をだしたあおい書店が今回のターゲットです。最近あおい書店は首都圏ばかりに出店しているのですが、本拠地を切り捨てる気なのでしょうか。「出店の多い書店チェーンは、出店が止まったときが危ない」という鉄則が書店業界にはあるのですが、最近のあおい書店の出店のペースは書店ウォッチャーの私を不安にさせるものがあります。大丈夫なんですか?そんなに出店して。
で、中野本店です。ここは駅から歩いて3分ぐらいの好立地。大きさは何と800坪です。2フロアですので、1フロアで400坪ぐらいあります。なんて馬鹿でかい店なのでしょう。入ってみましょう。
まず1Fです。えー、…何があるんだろう。1Fには。広すぎてよくわかりません。什器高もかなりあって見通しも良くないし。まずは雑誌がありますね。カウンター前には、ちょっとしたベストセラー系の本が重点陳列されていますが、ただ積んでるだけの印象。売場規模のわりにはぱっとしません。それとー、あぁ文芸書もありました。しかも全集が珍しくずらずら並んでます。でも巻抜けが多いなぁ。1巻だけがない、という全集が異常に多い気がするのですが、全集売場として間違ってないか?これは。裏側は、うわ、ビジネス書がずらーっと並んでいます。前平台がありませんので、全部棚差しです。これは探しにくい…。
1F売場はL字になっていまして、折れ曲がるあたりから文庫売場になっています。すでにこのあたりまでで私は疲れてしまいました。広すぎるし探しにくいし。
次、2Fに行ってみましょう。1Fと比べて段違いにお客さんがいませんねー。BGMも流れておらずお客さんもいない2Fでは、自分の靴音だけが響く静寂の世界となっています。2Fは専門書、コミック、アート、洋書がありますが、この構成は基本的に六本木店と一緒です。なぜかアイドルの写真集棚が最奥のアートの中にぽつんとあるのですが、女体は芸術、という意味なのでしょうか、そこだけ異様な雰囲気です。経営・経済という棚もありました。これが1Fのビジネス書売場とどう違うのかいまいちよくわかりません。あ、コミック売場の店員さん、告知物を紙のガムテープで貼ってる!あー、そんなことしたらガムテの跡が什器について汚くなってしまうじゃないですか!紙ガムテを使ったらいけないって、基本中の基本でしょ!と思ってたら、案の定あちこちの棚に無残な紙ガムテ跡が…。手遅れでしたか。
なんだかなー、この店は小売業の基本をわかってないのではないですか?でかけりゃいいってもんじゃないのです。巨大な店には巨大な店なりのルールが存在します。今のあおい書店は250坪ぐらいの売場発想で店が作られている気がします。売場設計の思想背景が根本的に違うんですよ。
まず巨大な店は、お客様が迅速に目的の場所にたどり着けるように、大ジャンルのゾーン分けをしなくてはなりません。文庫と新書はAゾーン、雑誌と実用書はBゾーンみたいな切り分けですね。次に遠くから見ても分かるように、ゾーンの巨大なサインを柱などにつけます。クエスト黒崎のように色分けされていると、なおベター。当然入口はいってすぐの場所には、このゾーンの記入された大きな店内地図があってしかるべきです。ここまでして初めてお客さんは目的の本の位置に迷わずにスムーズに行くことができます。店内のサイン計画が重要なのです。
次にAゾーンまで来たら、そこには細かいジャンルMAPが掲示されていなければなりません。Aゾーンの具体的にどこに目的の本があるのか、什器のレイアウト図でお客さんは確認するのです。什器の1スパンごとには棚番がわりふられ、お客さんからも棚番号が確認できるようにする必要もあります。什器の林の中では番号がついていないと、自分の見ている棚がどの棚なのかすぐに位置を見失いますし、在庫検索機では「この本は、Aゾーンの2056番角川文庫の棚にあります」という表示をするのが鉄則だからです。
ところが、この店はオープン当初売場案内図がありませんでした。ようやく最近になって紙でできたレイアウト図を紙ガムテであちこちに汚く貼っていますが、これまた細かい什器レイアウト図なので、ないよりはマシと言え、非常にわかりづらいのです。在庫検索機にいたってはいまだにありません。800坪もあるのにゾーンわけもされてなければ、棚番号もふられていないなんて、そりゃないよー。目的の本にたどり着くにはかなり時間がかかりそうなのです。
それだけではありません。この店には買い回りの主導線がありません。どうやらプロモーション提案と図書館機能の概念も存在していないらしいのです。ほんとにただ単にでかいだけなんじゃないの?これでは。
はい、そんなわけで、総合評価は50点。在庫は死ぬほどあるので、中野居住者は重宝すると思いますが、量よりも質、商品より売場、知性より個性、完成度より創造性を重視する私の個人的な書店ランクとしては、かなりダメ度高し。1Fが若干改善されているのが唯一の救いですが、この店が近所に出来ても今のままでは私は多分行きません。在庫減らしてもいいから、売場わかりやすくしてください。