海辺のカフカ (上) (新潮文庫)

海辺のカフカ (上) (新潮文庫)

海辺のカフカ (下) (新潮文庫)

海辺のカフカ (下) (新潮文庫)

読了。私はナカタさんに負けず劣らず頭が悪いので、書いてあることの半分も理解できませんでしたが、とりあえず特に理解する必要性を感じませんでしたので、そのまま読み終えました。何せ全編メタファーによるメタファーのためのメタファーみたいな話なので、何が何やらです。
ただ、ただこれを面白いと感じる自分がいます。でもそれと同時に私の中のゴーストがこうも囁きます。「これは好きになってはいけない物語だ。」
大体において私の中のゴーストは間違ったことがないので、私はそれに従います。
「小説というのは、大抵読むたびに違った感動を与えてくれるものだ。でもこの物語は、いつどこで読んでも君に違った無感動を与えてくれるだろう。つまり、君はいつでもどこでも、この物語を必要とする機会が未来永劫ないということだ。いつどこで何度読んでも、この本を違った角度から面白いと思うことはあっても、同時にこの物語が何も与えてくれないことを思い知ることになるのだ」
私はゴーストがなぜ私にそのような忠告をするのか論理的に考えてみようかと思いました。流麗な修辞技法によって描写され、幻想とセックスとセックスの幻想に彩られて構築された世界は、甘美な癒しの空間を抱え込んだまま閉じられています。ゴーストが私に、癒されている場合じゃねーよ、と言いたかったのか、世界が閉じていることが気に入らなかったのか、そもそもセックスを幻想化しているのが気に入らなかったのか、あるいはその全てなのか、よく分かりませんが、これは私が求めているような本ではないということは分かりました。面白かったんですけどね。評価A−