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鉄道ひとつばなし (講談社現代新書)

鉄道ひとつばなし (講談社現代新書)

鉄道と歴史、という個人的にはビンゴなテーマのエッセイ…と呼ぶには異様に内容の濃い本です。非常に面白い。全体的にじじむさい文章なのが難点なんですが、著者は62年生まれ。まだ40ちょっとなのに明治時代人のような文章書きますね。
内容は、時計の普及と鉄道の果たした役割(東北と九州の文化比較論)、韓国と日本の鉄道・バスの普及の違いの歴史的経緯、天皇が日本の鉄道に果たした役割、および天皇を利用する京王(調布と聖蹟桜ヶ丘の話)、という歴史を考える話。
駅名に見る関東、関西、中部の比較文化論(「新」のつく駅名の話)。「上り」と「下り」の話(特に阪急十三〜梅田間の話は衝撃。)。路面電車の走る西日本と走らない東日本、第三セクターが残る東日本とどんどん廃線化される西日本、などの風土論。
というような勉強になる話があるかと思えば、時折笑ってしまうようなものも。
半蔵門線における東急と東武の直行運転の話……東急は隠し、東武は宣伝する。ファッション誌の広告が車内吊りの東急とローン返済の法律事務所の広告が車内吊りの東武が一緒に走るという変な路線になってしまった田園都市線。東急から見たら東武への視線は、まさにオリエンタリズム(笑)。思わず吹き出してしまいました。そうそう、そうなんですよ。
小田急の普通が超不便という話……長年東急に乗っていた著者が小田急に乗ってその不便さに唖然とした話。そうそう、これもそうなんですよ。私も以前祖師谷大蔵に住んでいたのでものすごくわかります。経堂停車で通過待ち8分(!)のせいで、飛行機乗りおくれたことがあるので、いまだに小田急は嫌いです。
その他、阪神電車の停車駅がわけわからんという話とか(同感です)、京葉線快速のスピードが異常に速いとか、富山地方鉄道は自分で自分のことを「地方」と言ってて謙虚で偉いだとか、なぜ浦和には普通電車がとまらないのだろう、とか色々。
それにしても尼崎列車事故には驚きました。事故のほんの3日前、ちょうど私もあの区間に乗っており、馴染みの場所だっただけに余計に衝撃的でした。JR西日本を擁護する気はまったくありませんが、アラ探しのようなマスコミ報道は不愉快なのでやめてほしいです。