④なぜ紀伊国屋は出版社別で、ブックオフは著者別になるのでしょうか?

これまで出版社別陳列と著者名別陳列の長所短所を見てきたわけですが、
実際の店舗ではどちらを採用されているのでしょうか。まず新刊書店では、およそ90%が出版社別陳列です。日本で一番売っている業界最大手の紀伊国屋書店もやはり出版社別で陳列していますね。古書店ではどうでしょうか。業界最大手のブックオフは著者別陳列ですね。この違いはどこにあるのでしょう?

正しい陳列方法その2のコメント欄で出版社別陳列について「書店側の都合ばかりで、お客様のことを考えていないので悲しくなった」というご意見をいただきました。うーん、そう受け取られてしまったのは、ちょと残念です。実はですね、紀伊国屋書店はご購入されるお客様のことを考えているがゆえに、出版社別陳列になっているんですよ、本当は。同様に、ブックオフもお客様のことを考えているがゆえに、著者別陳列になっているのです。
っておいおい、矛盾したこと言ってないかー、と思われる方。紀伊国屋ブックオフの違いを考えてみませんか。一番の違いは、仕入先です。ブックオフではお客様から買い取ってお客様に販売するわけですが、新刊書店の仕入先はお客様ではありませんね。仕入先は出版社になりますから、ブックオフのように一方向だけを見ているわけにはいかないのです。要はですね、新刊書店は仕入がうまくできなければ、商材を安定して供給することができず、結局購入されるお客様にも、ご迷惑をおかけしてしまうことになる。仕入先である出版社ともWIN−WINの関係である状態を書店側では作り出さなければ、お客様に対してもWIN-WINになれなくなるわけです。新刊書店は文庫を販売するにあたって、文庫の並べ方だけにこだわっていてはいけないわけですね。仕入先の利益も含めたトータルバランスを考えなければ本当にお客様のためになる売場を実現することができないわけです。そのバランスがお客様側の方に傾きすぎると、著者別陳列になりますし、仕入先側に傾きすぎると、単純な出版社別陳列になってしまいます。多くの店は基本的には出版社別陳列ですが、似たようなコンテンツを持つレーベルを同じエリアに配することによってバランスを取ろうとしています。例えば、「新潮と文春」「幻冬舎と角川」「ハヤカワと創元推理」は色合いが似てるから隣接させる。「講談社学術と岩波」「ハルキホラーと角川ホラー」「PHPと知的生き方」なんかもそうでしょう。ブックオフでは、そういうバランス感覚は不要ですので、阪本社長には出版社別に陳列する意味が理解できないわけです。
大きな違いがもう一つあります。それは棚の形状です。ブックオフの棚前には平台が存在しません。すべて棚差しになっています。しかし、紀伊国屋書店の文庫棚には前平台があります。これですよ、これ。著者別陳列は棚だけだと楽に陳列できるのですが、平台が入ると難しくなるという話は、これまでにしてきたとおりです。
さてさて、とは言え、このままでは何の解決にもなっておりません。結局出版社別陳列には出版社別陳列の欠点があるわけですし、著者別陳列の長所も捨てがたい。そのおいしいとこどりが出来る陳列方法を模索することはできないのでしょうか?
次回最終回。その方法がついに明らかに!!(ひっぱりすぎだ(笑))