最近読んだ本。

続弾!問題な日本語―何が気になる?どうして気になる?

続弾!問題な日本語―何が気になる?どうして気になる?

書店というのは接客業だからなのでしょうか。接客で使用する「問題な日本語」にはほとんど違和感がない私なのです。「千円からお預かりします」は普通に使うなぁ。前作に比べるとパワーダウン。書き手によって「問題な日本語」に対するスタンスも微妙に違うのもちょっとね。評価C+
反社会学の不埒な研究報告

反社会学の不埒な研究報告

「問題な日本語」にも取り上げられていた「味にこだわる」という表現について、より深く歴史的な使用例の経緯にこだわっているほか、前作の「反社会学講座」のノリで語られるテーマの範囲が、今回は社会学に限らず文学や思想、歴史などに広がっていて面白いですね。特に「武士道」に関する考察は非常によくできています。また、最終章は若い書店関係者(特にビジネス書担当)は必読?な内容です。ビジネス書というのは、私が書店をやり始めた頃には当たり前のように存在していたのですが、結構新しいジャンル体系だったんですね。評価B−
新装版 坂の上の雲 (7) (文春文庫)

新装版 坂の上の雲 (7) (文春文庫)

新装版 坂の上の雲 (8) (文春文庫)

新装版 坂の上の雲 (8) (文春文庫)

パオロ・マッツァリーノも太鼓判「経営者が社員に読んでほしい本第一位」に挙げられるこの大作をようやく読了しました。司馬遼太郎が自身の四十代をすべてこの作品に注いだと語る渾身の作品ですが、これぞ歴史小説というべきすばらしい作品でした。日露戦争がいかに運の要素が強い危うい戦争であったかということ、それが故にどれだけ当時の日本が努力をしたか、が詳細に語られ、後の精神主義に走った昭和の日本軍との比較が語られます。この新装文庫版がよかった点は、過去の版型の「あとがき」がすべて収録されており、それが本文以上に密度が濃いところです。中でも日露戦争の戦史を編纂する途上で、論功行賞のため日本軍の戦略戦術上の失敗をすべて隠蔽したことが日本の最大の失敗であり、後の愚かな戦争につながったと指摘する箇所があるのですが、これぞ司馬史観といった感じで、大変勉強になりました。99年に新装版が出てからすでに十九刷。日本人がこの作品を読み継ぎ、この作品の主旨と精神を引き継いでいく限り、亡国することは無いのかなと思いましたが、甘いか。評価S