そんなに読んで、どうするの? --縦横無尽のブックガイド

そんなに読んで、どうするの? --縦横無尽のブックガイド

そもそも書評というのは、どういうとき需要があるのでしょうか?私個人の話で恐縮ですが、私の場合は4パターンに分類できるのではないかと思われます。
1つめは、読んだあとに他のみんなはどういう感想をもったのであろうと気になるときに読むパターン。素晴らしいと思った本ほど、他人の書評を読んでさらにその本との共感レベルをあげたくなるんです。
2つめは、読まないといけないんだけどヒマが無くて読めない本を誰かがサマリーとしてまとめてくれたものを確認するパターン。私のかわりに読んでくれてありがとう、勉強になったよっていうやつ。
3つめは、読む気が全くおきない本を誰かが酷評しているのを見て、「ああ、やっぱりな。読まなくてよかった。」と自分の選書眼に自己満足するパターン。斎藤美奈子の書評を読む動機はこれが多い気がしますね。
4つめは、これまで自分のアンテナに引っかかっていなかった本を「これ面白いよ」と紹介されるパターン。内容を紹介しないといけないうえに、ネタばらしされると興がそがれますので、書くほうは技術を要する書評です。
で、これはトヨザキ社長こと豊崎由美の書評本ですが、正直なところ買わなきゃよかったと思いました。なんでかというと、この本がお粗末な内容だから、なのでは決して無くて、むしろそれぞれの書評が的確でありすぎるという出来映えの良さに参ってしまったからなのであります。私の中では「面白いとわかっていて、とても読みたいのだけれど、まだ読めてない本」というのは、自分で読む楽しみ用に事前に「書評は読みたくない」のですが、トヨザキ社長の紹介する本がことごとくこれに該当しているのです。しかも実に的確な内容紹介と批評が載っているものだから、これでは私の楽しみが半減ではないですか!
というわけでこの本は途中で放り投げてしまいました。巻末に袋とじがついていて、渡辺淳一が文春に怒鳴り込んできたという伝説の罵倒書評が掲載されていますが、別に大したことは書いているわけじゃないので、期待しすぎは禁物。評価**