大塚英志というサブカル界きっての論客の面白いのは、功績といい脆弱さといい、無自覚にそのまま日本のオタクたちの内面を映し出した象徴的な存在になってしまっているところです。本人は否定するでしょうけどね。この本にもその二面性はとてもよく表れていて、前半の日本のまんがの起源は鳥獣戯画北斎漫画などでは決してなく、元々はハリウッド的なものであるディズニーの模倣に、戦時下の国策統制が混ざって成立したものだということを看破しているあたりは、「教養としてのまんがアニメ」の続編とも呼ぶべき優れた論考です。まんがの歴史はイデオロギーの歴史になぞらえることが出来る、という主張は、非常に鋭くてこれぞ評論と評価できるものでした。
ところが後半はグダグダなんですよね。ジャパニメーションを国策化しようとする政府が気に入らない大塚が、あれやこれやと「証拠」を出して「こんなものは失敗する」と予告するわけですが、これがまるで中二病患者の文章なんですね。感情が先に来ちゃってるので、結論ありきになっていて、統計資料は正確に読めないし論旨は破綻してるし、前半と矛盾したこと言ってるけど本人は気づいてないし、と散々。この件では六本木ヒルズでも大暴れしたらしいですが、「大人になれよ」と誰か言ってやったほうがいいっすよ。評価C+