ナラタージュ

ナラタージュ

何ヶ月かぶりに煙草を吸ってしまった。動揺しているらしい。私の心のどこか奥深いところで何かが壊れてしまったみたいだ。この小説のせいで私は朝からものすごく憂鬱な気分を隠せない。何となく嫌な予感がしてこの小説読むのはなるべく後回しにしていたのだけれども、投票まで一週間をきってしまった。やむをえず読んだら案の定だ。
島本理生は前にも書いた気がするが、この作品を読んで確信に変わった。江國香織のあとを継ぐのはこの人に間違いない。うますぎる。しかもそれでいて技巧的でない。まだ若いし、それがゆえに作品世界の広がりがどうしても幼いというところが、欠点と言えば欠点なのだけれども、この作品に関しては「きっと子供だったから愛とは違うとかじゃなくて、子供だったから、愛してるってことに気付かなかったんだよ」と逆手に取られていてぎゃふん。これからこの人はどんな傑作をうみだしていくのだろうか、それはまた私の心をえぐる様な作品なんだろうなぁ、読みたくないなぁ、と思いながら、こんなブルーな気分で町田康の「告白」を読まなければならないのだ。あかんのではないか?評価A−