ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる (ちくま新書)

ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる (ちくま新書)

ようやく読了。ロングテイル現象やWeb2.0の世界についての理解は深まりましたが、どうもピンと来ません。ニュータイプじゃないからでしょうか。現時点での可能性というのが、なんだかんだ言ってもバーチャルな世界での影響に限られていて、リアル世界への影響はまだ間接的なものに過ぎず、梅田氏が言うようにリアル世界においても本当に革命的なものになりうるのかというのが、正直私には予測できないためです。
Web2.0を駆使するアマゾンの登場で、リアル書店業界にはどういう影響が考えられるでしょうか?ネット書店の拡大によってリアル書店が駆逐されるという可能性は考えられるでしょうか?
アマゾンのある米国において、2000年当時のリアル書店の売上は24921億円だったと推定されています。対してネット書店の売上は2106億円。その後急成長したネット書店の現在の売上は3276億円。1100億円の増加で約1.5倍にマーケットが拡大しています。ですが、米国ではリアル書店の売上も上がっているのです。現在は31356億円で6000億増です。少なくとも米国ではアマゾンの勃興がリアル書店の売上減につながらなかったということになります。
対して日本では、2000年当時40億にすぎなかったネット書店の本の売上が、現在400億円と10倍の規模になりました。額で言うと360億円の増加になります。対してリアル書店側では、23926億円あった売上が22078億円に落ち込んでいて、1848億円のマイナスとなっています。つまりリアル書店はネット書店の売上増加分の5倍もの売上を落としているという計算になります。
これはどういう事か。現在の日本のリアル書店の不振は、ネット書店との競合が本質的な原因なのではなく、それ以上に自分自身の抱える問題点が原因で、消費者の支持を失いつつあるということになります。ということは、淘汰されるにせよ、ネットによる駆逐とは言いがたいという結論になりそうです。
いずれにせよ、米国ですら10%というシェアでしかないWeb上のマーケットで革命が進行しても、リアル書店には、影響は軽微なのではないでしょうか?サービスの競争が激化するに伴い、流通事情が改善することや、ロングセラーが発掘されたりといった影響はあるかもしれませんが、それは革命的なこと?ではないだろうし。評価B+