配達あかずきん (ミステリ・フロンティア)

配達あかずきん (ミステリ・フロンティア)

書店を舞台にしたミステリは成立しないものかと自分でも考えてみたことはあったのですが、殺人とか、そういうミステリの素材とは幸いなことに縁の遠い職場ですので、なかなか事件を考えること自体が難しくて挫折した経験があります。この本は、それを真正面からやっているわけで、まずそれに感心。しかも第一話の処理などはとても技巧的で、かつ書店員の専門知識ならでは、という話で、これはやられた!という感じです。ただ第一話以外の展開は、やはりちょと強引というか、書店ミステリというのは謎自体の組み立てが難しいのだなぁ、と感じます。
さて、作者の大崎梢さんは元書店員ということですが、この成風堂書店のモデルはどこなのでしょう。本格書店ミステリということなので、本編にちりばめられているヒントは、モデルの書店をあててごらん?という作者からの挑戦状と勝手に解釈して推理してみることにしましょう。
■東京ではない(51ページ)が、東京近郊(171ページ)■著者は神奈川県在住。(裏表紙)■駅にくっついたファッションビルの6Fでとても立地が良い(全編に登場)
ということで、この成風堂書店は神奈川県にあるターミナルである可能性が高いですね。横浜・川崎・町田・新百合丘・橋本・立川・八王子あたりが有力候補でしょうか。
■駅はJRで東口と西口がある(128ページなど)
■西口はバスターミナルがあってひらけているが東口は殺風景。(139ページ)
となると、横浜か川崎ですね。町田はひらけているのが東西逆ですね。
■女性向けのブティックや雑貨店がほとんどのビルで、客層も若い女性中心■一つ上のフロアはレストラン街で22時まで営業している(57ページ)
となると、横浜のルミネか川崎のBEしかありませんね。どちらも入っている書店は有隣堂ですね。さあ2店舗に絞られました。
■フロア坪数は100坪ぐらい(50ページ)
これは多分嘘ですね。正社員4人とか、一日入荷二十箱とか、明らかに百坪の書店経営指標と一致していません。有隣堂ルミネ横浜店は327.54坪、川崎BE店は284.69坪なので、これはミスリードの罠とみました。
■20:30で閉店になる(57ページ)
どちらの店も21:00まで営業なので、これは決め手にはならないですねー。
■近隣にCDの販売店がある(34ページ)
横浜ルミネにはCDショップがないのに対し、川崎BEにはオデオン堂というCDショップが!これは川崎BEである可能性がかなり濃厚になってきました。
■ビルの3Fから駅の改札につながっていて、エスカレーターからそこまでは宝石店・鞄店・化粧品店の間を抜けていく(138ページ)
ということで川崎BEの3FのフロアMAPで検証してみましょう。http://www.kawasaki-be.ne.jp/fg/3f.html
MAP右下のエスカレーターから降りてきて、駅連絡口に向かうとすると、56の鞄店「原宿サンマリノ」と61の宝石店「サトウダイヤモンドチェーン」の前を通り、48の化粧品店「コスメティックス」の間を抜けていくことになります。これはもう決定的ですね。
成風堂書店のモデルは、有隣堂川崎BE店http://www.ekipara.com/html/Indication/ShopHtml/K2010R01_224.htmlと断定されました!QED