DEATH NOTE (12) (ジャンプ・コミックス)

DEATH NOTE (12) (ジャンプ・コミックス)

評判の悪い最終巻ですが、どのようにすれば読者の期待にこたえることが出来たのか、なぜ評判が悪いのかを構造的に考えてみるとなかなか興味深い研究材料になると思います。やはりあのような偽善的な正義しか語らせることができなかったニアのキャラクター造形の魅力の弱さと、それに伴って割り振られたリュークの役割が読者の期待を悪い意味で裏切ったということが一番最大の失敗だったのではないかと思います。最終トリックがあまりにも無茶すぎた上に小細工に伏線すら存在していなかったというのも減点対象にはなるでしょうが、これは話の展開上ライトの行動に制限を付け加えすぎた後半の展開に、引きずられた形でラストを迎えなければならなかった脚本上の欠陥によるもので、やむをえなかったのでしょう。
多分読者の期待していたベタなラストはこんな感じです。
ニアとの壮絶な頭脳戦に挑むライト。しかしライトが裏をかいていたと思っていたニアは、さらにその裏をかいていた。ライト大ピンチ。しかし、読者すらとうの昔に忘れていた伏線がここで生かされる。ライトがいざというときのためにデスノートにあらかじめにこうした事態に備えてわざと生かしたまま操っていた○○が登場したのだ。完全に予想外の展開に敗れ去るニア。高笑いするライト。しかし、完全勝利かと思われたライトが突然その○○に刺されてしまう。「何故だ!私にミスはなかったはず…」死にそうになっているライトにリュークが問いかける。「おまえデスノートに〜〜って書いてあったじゃん。これってこういう意味じゃないの?」つまりライトの書いた文章はダブルミーニングだったため、リュークが解釈を間違ってしまい、それがためにライトが刺される羽目になってしまったのだ。「馬鹿な…」息絶えるライト。これで関係者全員が死んでしまった。それをニタニタ笑いながら眺めるリューク。「やっぱ人間ってすごくおもしれー」次なる標的を探して旅立つリューク。次にデスノートを拾うのはあなたかもしれない(完)
多分こういう話だったら「ベタなんじゃー!」という批判はあるにしても、ここまで非難は浴びなかったのでは?という気もします。つまり読者は次の3つの条件を物語に求めていたのではないでしょうか?
①読者の想像をこえたところでライトのうった手が勝負の決め手になる②ライトは全くミスをしていないのに自分の計算外のことが発生してしょうもないことで死ぬ③リュークは最後まで天然ボケキャラを貫く
意外な展開ばかりなのもいいけど、やはり最後は読者のカタルシスは満足させないとね。評価B