ローマ人の物語 (24) 賢帝の世紀(上) (新潮文庫)

ローマ人の物語 (24) 賢帝の世紀(上) (新潮文庫)

ローマ人の物語 (25) 賢帝の世紀(中) (新潮文庫)

ローマ人の物語 (25) 賢帝の世紀(中) (新潮文庫)

ローマ人の物語 (26) 賢帝の世紀(下) (新潮文庫)

ローマ人の物語 (26) 賢帝の世紀(下) (新潮文庫)

五賢帝のうち、トライアヌスハドリアヌスアントニヌス・ピウスを描く塩野七生のローマ人シリーズ。まぁ、読んでいてわかるのですが、塩野七生にも皇帝の好き嫌いがあって、やっぱり好きな皇帝の時は筆が乗っているので読んでいて楽しいんですよね。塩野七生的皇帝の萌えポイントが一体どこにあるのかは、あまりにも微妙なのでよくはわからないのですが、今回はハドリアヌスに尽きると言う感じ。世界遺産でもあるハドリアヌスの防壁でしか名前を記憶していない人でしたが、この人の生き様(としか言いようが無い)にすっかりファンになってしまいました。個人的な好きなローマ皇帝ランキングだと二代目のティベリウスの次に来ます。ローマ帝国安全保障戦略を完璧にリストラクチャーした超有能な皇帝なのですが、その仕事ぶりもさることながら、この人が皇帝をやることになった経緯も実に興味深い。評価A−
ローマ人の物語 (27) すべての道はローマに通ず(上) (新潮文庫)

ローマ人の物語 (27) すべての道はローマに通ず(上) (新潮文庫)

ローマ人の物語 (28) すべての道はローマに通ず(下) (新潮文庫)

ローマ人の物語 (28) すべての道はローマに通ず(下) (新潮文庫)

皇帝列伝から離れて、ローマ街道や水道などインフラについて語った巻。学生時代のときは、固有名詞の暗記で終わった世界史でしたが、ローマ帝国の世界史上の意味は、この塩野七生をよむまでは、全然わかってなかったのです。この巻の冒頭で、中国の万里の長城との比較文明論が語られます。東西両文明は、技術的には当時同じ水準の土木技術を有していたが、東の帝国では外敵を侵入させないために壁を築き長城を作ったが、西の帝国では外敵をもローマ市民に組み込み、ローマ街道をネットワークのように張り巡らすことによって、蛮族の居住地域そのものを文明化していった、これが大きな違いであり、ローマが繁栄した最大の理由であるという話。実はこのローマ帝国を象徴するローマ街道とローマ水道はどちらも同じ人物によって創造されています。ローマ史上屈指の大天才と塩野七生が評するのはアッピウス・クラウディウス塩野七生は長いローマ史の中でも大天才はカエサルとこのアッピウスの二人しかいないと言い放ちます。確かにその後の世界史を考えると、このアッピウスの業績はものすごくて、ヨーロッパにおいては中世が古代よりも暗黒の時代になってしまった、というのもこのインフラが機能しなくなってしまったためであるわけなんですね。相変わらず勉強になりますが、こういう本を読んでいると、自分の器の矮小さに嫌気がさしてきますね。評価A−