ユニクロvsしまむら―専門店2大巨頭圧勝の方程式

ユニクロvsしまむら―専門店2大巨頭圧勝の方程式

うちの会社が目指すべき流通モデルのヒントがこの本にあるから読んでおくように、というお達しが上司からありましたので読んでみました。低迷が続くアパレル業界で勝ち残ったユニクロしまむらが、何故勝ち残ったのか?目指しているところはどこなのか?違いは何か?共通点はどこか?を分析している本です。
この本を読んで初めて気づいたのですが、アパレル業界と書店業界って、結構共通しているところが多いんですね。まず、業界全体が右肩さがりなこと。多品種少量販売であること。郊外型店舗と都心型店舗の構成であること。店舗が大型化しどんどん効率が下がっていること。まぁ大半は今の小売業共通の悩みなわけですけど。
そんな中でユニクロしまむらの経営は対照的。
ユニクロは多品種少量販売を逆転させて、フリースに代表されるように品種を極端に絞り込んで少品種多量販売を実現、卸を使わず、生産地から直納させることで流通コストを削減し、高品質低価格販売路線を突き進む。出店も無茶苦茶なペースで行うけれど閉店も多い(過去5年間で出店387に対して閉店191)。徹底的に現場主義で商品発注は店舗がおこなう。人材はスペシャリスト志向。
対してしまむらは、卸を自社内に取り込んでしまう流通網を構築し、なんと宅配便の4分の1の流通コストを実現。経費率20%というとんでもなく優秀な低コスト構造を実現することで高品質低価格販売路線を突き進む。出店は堅実だけれど、閉店は出店86店舗に対して1店舗だけという驚異的な数字。自社内でヘリコプターで空撮までやって市場調査を自前で完璧におこなうので、立地選別に失敗が存在しないらしい。MDはセントラルバイイングで、店舗スタッフは届いた商品を並べるだけでよい。従業員の86%がパート。電話帳何冊分にもなるマニュアルが完備されていて、教育および徹底体制がばっちり。しかも現場スタッフからの意見がすぐにマニュアルに反映される仕組になっていて「やらされてる感」もなく、楽しく働ける職場なのだという。人材はゼネラリスト志向。高速配転制度という人事制度があり、しまむらの社員は3年ぐらいで職種が変わってしまうのでスペシャリストがいない。でも全員いろいろな職種をやっているから全員なんでもできるし、癒着もないし冷静に職種を横断した改善案が出せるという仕組み。
このようにまるで違う二社なのですが、極端で、かつシンプルな方法で、既存の小売流通業界を破壊したという点では、共通しているのです。つまり目的が同じでやり方が違うだけなのですね。デフレ社会の勝ち組企業は売上をとりにいく企業ではなく、低コスト構造を徹底した業態を実現できたところなのだそうです。
これ、書店で応用しようと思ったら、やはり「しまむら」式のほうがやりやすそうだよなぁ。ユニクロはめちゃくちゃだし。卸を自社内に取り込むということで言えば、TSUTAYAやワンダーグーがちょっと始めている。セントラルバイイングでは三洋堂書店が有名。三洋堂は経常利益率もそういえば高い。スペシャリスト系が多数派を占める書店業界では、高速配転人事制度はあまり聞かない。ものすごいマニュアルも無さそう(FCもやってる平安堂とかにはあるのかな?)しまむらのようなガリバー企業は、まだ生まれていませんが、チャンスはまだあるということか。
もし私が、独立して書店を作ろうと思ったら、こういう店を作ればいいわけか。すでに制度が固まっているチェーン規模でやるのは大変そうだけど、独立系書店からのスタートであれば、意外と苦ではないかもしれませんね。