少年時代〈上〉 (ヴィレッジブックス)

少年時代〈上〉 (ヴィレッジブックス)

少年時代〈下〉 (ヴィレッジブックス)

少年時代〈下〉 (ヴィレッジブックス)

世界幻想文学大賞受賞、ブラム・ストーカー賞受賞、日本冒険小説協会大賞受賞、という輝かしい実績を誇る作品であります。10年も前に刊行されたものであり、マキャモンは断筆していて新刊もでないので、恥ずかしながら私はこの作品の存在を知りませんでした。一昨年ヴィレッジブックスから復刊されたときに、池上冬樹が大絶賛していて「少年時代だけを置いている本屋があってもいいよね」みたいなことを書いていたので、翻訳ものは苦手な私がつい衝動買いしてしまいました。
で、どうだったかというとですね、これは本当にすばらしかった。ものすごく長いのですが、長いことがまったく苦痛にならない。いつまでも読んでいてもいい。最後なんか、えー、もう終わっちゃうの?と思ったぐらい。
小川洋子の「ミーナの行進」などもそうなんですが、子供時代を描いた作品は、ノスタルジーがテーマとなることが多いものです。この作品はもちろんそういう要素もあるのですが、ミステリサスペンスとホラー、ファンタジー、アドベンチャーの各要素が奇跡的なまで高い完成度で全編にわたってちりばめられており、しかも個々のエピソードが、それぞれ短編にできてしまうくらい全部面白いのです。そしてそれが団子のように一本の串で貫かれて大きな話の流れに沿って物語を構成しているという、非常に技巧的なのにそれを感じさせない神業に近い小説なのでした。こういう本を読めると幸せ。評価A+