精霊の守り人 (新潮文庫)

精霊の守り人 (新潮文庫)

ユリイカでも特集されている上橋菜穂子さんの「精霊の守り人」がテレビアニメ化(BSだけど)ということで読んでみました。アボリジニを研究している文化人類学の先生が書いてあるだけあって、児童文学と言っても、設定がファンタジー的にリアルですばらしいです。しかものっけから引き込まれるスピード感あふれるストーリー展開といい、降りる駅を乗り過ごしてしまうくらい夢中で読んでしまいました。「空色勾玉」とかが同系統に入るのでしょうが、こっちのほうが面白かったなぁ。やはりファンタジーは最高ですね。評価A
鹿男あをによし

鹿男あをによし

真夜中に奈良公園を散策したことのある方はおわかりかと思うのですが、夜の春日大社付近は結構怖いです。森の奥の闇に鹿の目が集団で光ってるんですよ。それがじっと闇の中からこっち見てる。角ついてるやつは、かなりの威圧感があります。
さて鹿せんべいを持ってるとお辞儀してくれる礼儀正しい鹿は奈良にしかおりません。宮島の鹿は本当に無礼者でした。一体誰がお辞儀を教えたのでしょうか?幸島のサルみたいに、ある日一頭の鹿がお辞儀をしてみたら人間が感心して鹿せんべいをたくさん貰えたので、どの鹿も真似してやるようになった、という自然発生的な進化だったら面白いのに。
そのお辞儀をする鹿の謎を解き明かしてくれるファンタジーをご紹介。京都が舞台だった「鴨川ホルモー」に対して万城目さんの今回の作品は奈良が舞台。夏目漱石の「坊ちゃん」を下敷きに書いたような作品で、敵キャラの正体だとか、「サンカク」の正体だとか、物語の中盤にさしかかったら、もう全部わかってしまうのだけれども、何というかネタバレしていても安心して面白く読めるという不思議な魅力が万城目さんの作品にはあるように感じます。少々設定に無理があっても気にしない気にしない。次回作は大阪らしいので、これで三都物語完成。あ、神戸がない。評価A−