夏といえば怪談ですね。というわけで怪談フリークを自称する私の最近出た怪談新刊レビューです。
好評だった
北野誠の怪談集第二弾。屈指の書き手である加藤一が文章を書いているのでなかなかのクオリティ。しかも怪談の質も高い。ただ
北野誠がかなりからっとした性格なので、怖い目にあってもあんまり怖そうな展開にならず、恐怖度は抑え目。じっとりした怪談がお好みな方には少々もの足りなく感じられるかも。恐怖度C不思議度B完成度B
今もっとも乗っている怪談作家といえば
平山夢明。彼の特徴は、生理的にオエーッとなるシチュエーションにすることで、恐怖度をドーピング的にあげる話が多いこと。たとえば、登場する幽霊が腐乱死体だったりすることが多くて、鼻を突く異臭とともに登場し、眼球から蛆虫をボトボト落としながらギチギチ歯をならしながら天井にはりついてたりする、想像するだにいやーな状況を書くのが上手い。
心理的なものももちろんうまい。現在最強の怪談作家でありましょう。恐怖度A不思議度B完成度B
「幽」に連載されていた、
京極夏彦の怪談集。と言ってもオリジナルではなく、江戸時代の「耳袋」の中に登場する怪異譚を「
新耳袋」風の文体を使って現代語訳したもの。この京極風の「
超訳」が舌をまくほどうまくて、非常にすばらしい短編集に仕上がっている。私は原文の「耳袋」も持っているが、はっきり言ってその原作よりも面白くなってしまった。ただ、「
新耳袋」がそうであったように、恐怖度はほとんどなく、不思議度を優先した話が多い。幽霊は出てきてもあまり怖くない。でも非常に不思議な話が満載で異次元ワールドが体感できる。恐怖度C不思議度S完成度A
第一回「幽」怪談
文学賞長編部門大賞受賞作。本部のMDから、めっちゃ怖くて途中から読めなくなると脅されて渡されたのですが、全然平気。これで怖がってたら
平山夢明は読めないよ。上の三作品が基本的に実話ベースなのに対して、この作品は完全に小説、ということでそれだけで恐怖度が下がります。ただ、小説でこの怖さですから、映像化したらこれは相当なものになるのではないかと。恐怖度B不思議度C完成度B