硝子のハンマー (角川文庫)

硝子のハンマー (角川文庫)

「黒い家」「天使の囀り」など、ホラー小説で一級のエンターテイメント作品を連発している貴志祐介氏の作品の文庫化です。この本は、ホラーじゃなくてミステリでした。しかも直球の本格推理。密室殺人ものです。
密室の謎に挑むのは、貴志作品にはよく見かけるタイプの若い女性主人公、青砥弁護士。こいつがワトソン役で、ホームズ役が自称防犯コンサルタントをやっているという潜入のプロ、榎本という怪しい男。監視カメラに赤外線センサー、自動ロックに強化ガラス、という二重三重のハードルをどういう風にクリアしていくのか、詳細な防犯知識を交えつつ犯行の可能性を一つずつ潰して真相に迫っていくという話です。
まあ、それなりに面白いです。防犯関係の知識も教えてもらえるし、物語の構成もよく出来てます。普通に読んでいても、こいつが犯人だ、というのはまずわからないし、本格推理モノとしては十分合格点でしょう。というか日本推理作家協会賞受賞作だし、そのへんは私よりもはるかに詳しい専門家の皆さんのお墨つきです。
でもそれ以上でもそれ以下でもないというか。密室とかそういうのに、全然興味がないと、つらいんじゃないかな。評価B-