とせい (中公文庫)

とせい (中公文庫)

働きマン」は実は版元さんには評判があまりよくないそうです。現実はこんなに甘くないよと、読んでいて気分を害してしまうのだとか。あれも「サラリーマン金太郎」と同じでお仕事ファンタジーの一種だからと割り切って読んでしまえば面白いエンタメだと思うのですが、微妙にリアルだと割り切れなくなってしまうということなんでしょうか。
その点、この「とせい」ですが、同じ出版社を舞台にした話ではあるんですが、あまりにも設定が非現実過ぎて「働きマン」がダメだった人も、さすがにファンタジー小説として楽しめるのではないかと思います。
出版業界についてはとんと無知なヤクザがつぶれかけの出版社を買い取ってしまい、業界の常識では考えられないような無茶な企画を考え付くのですが、その企画が意外や意外、ヒットを飛ばしてしまい…!?というヤクザ×出版コメディ。売上がさがる一方の週刊誌の部数をあげる起死回生の秘策とは?いまいちの女性ファッション誌をよみがえらせる企画とは?大手出版社に人気作家をとられて、どうにもならない文芸書編集部のテコ入れ策とは?
人気急上昇中の今野敏ならではの面白さ。オススメです。ただし、絶対にこの方法は真似できないけどね。評価B+