悪人

悪人

本屋大賞候補作。なかなかこれはすばらしい作品で、宮部みゆきの「理由」を読んでいるようでした。吉田修一というと、どうしても技巧的な文章が印象に残る方で、実際この作品も多分に技巧的ではあるのですが、今回はその技術を見せつけるのではなく、淡々としかも密度を損なうことなく、自分が書きたかった人間像を書ききっていて見事でした。あまり好きな作家さんではありませんでしたが、見直しました。
ただ、話の途中はこんなにも面白いのに、最後読みおえた後にその面白さが持続しない、あれれ、こんな終わり方なの?と思ってしまったのも事実。この作品は、最終章がよかったら傑作だったろうに、と惜しまれます。
ようやく本屋大賞のノミネート作を読み終えました。つらい一ヶ月だったなぁ。ようやく投票できます。