2008年本屋大賞の予想

実質的に二強の争いだった昨年に比べ、今年の本屋大賞はすばらしい作品が粒ぞろいで、どの作品が選ばれてもおかしくない、ハイレベルの戦いになっています。非常に大接戦の今年ですが、希望的観測(願望)も含めて、恒例となりました本屋大賞の予想をしてみようと思います。
本屋大賞は、大体三つの要素で予想を組み立てることが出来ます。

  1. 作家の人気度

直木賞もよく、作品にあげるのではなくて作家にあげるものだ、みたいな言われ方をしますが、本屋大賞にも少なからずその要素は含まれます。今回のノミネート作家の中で、書店員人気の特に高い三ツ星作家さんは、伊坂幸太郎桜庭一樹森見登美彦の三名。人気の高い作家さんの作品は書店員の贔屓目が入りますので、作品の評価が「通常評価の一割増し」となり、有利となります。票を読む上で忘れてはいけない要素となります。

  1. 作品のすばらしさ

もちろんのことですが、そうは言っても作品がすばらしくなければ当然受賞することはできません。自分たちが選ぶ作品ですから、選書眼を疑われるような作品を推挙することは書店員のプライドが許しません。では、今回どの作品がすばらしかったでしょうか?当然これは人によって全然異なりますから、客観評価はできませんので、個人的によかったものを挙げてみます。10作品のうち個人的上位4作品にしぼって見ましょう。
金城一紀の「映画篇」、伊坂幸太郎の「ゴールデンスランバー」、近藤史恵の「サクリファイス」、桜庭一樹の「私の男」の4作品です。多分この中から選ばれると思います(というか、そう希望します)。

  1. そろばん

本屋大賞を左右する三つ目の要素、実はそれは「そろばん」です。普通に作品を評価する際には、評価基準にすることはありえないのですが、どっちにしようかなー、と最終段階で迷ったりしたときなんかに、ひそかにモノを言う基準です。
たとえば今回だと桜庭一樹さんや万城目学さんの例がわかりやすいでしょうか。桜庭一樹の「私の男」は、直木賞を獲ってすでにベストセラーになっています。そのようなすでに世間的に認められた作品を本屋大賞として選んじゃっていいの?と躊躇してしまうわけです。万城目学の「鹿男あをによし」もすでにテレビドラマでやっていて、今でも十分知られてるし売れてるし、この作品を選ぶべきなんだろうか?と、書店員はちょっと悩んでしまうわけです。こういう作品は「通常評価の一割引」で不利になりますね。作品の絶対評価以外の部分で、投票を行方を左右してしまうこの要素を私は「そろばん」と読んでいます。商売人なので、どうしても本屋大賞の効果を計算してしまうわけなんですね。
さて上記を総合的に見て、今年の本屋大賞でトップにたちそうなのは、伊坂幸太郎の「ゴールデンスランバー」でしょうか。本命作品として一歩他をリードしているように思えますが、対抗の「サクリファイス」「映画篇」あたりと熾烈な争いになりそうです。その次あたりに森見さんの「有頂天家族」と桜庭作品のどっちかが食い込む形、になるのではないかと予想します。
まあ、どれが最優秀かとか決めることなんて、そもそもは「本当に面白い本を読む」ということからするとどうでもいいことでありまして、本当は今回の十作品全部をお客様にはお届けしたいと、書店員は本気で全員そう思っています(というか、そう希望します)。