おもいでエマノン (リュウコミックススペシャル)

おもいでエマノン (リュウコミックススペシャル)

おおっ鶴田謙二の最新作だーということで即購入。そして期待通りのすばらしい出来栄え。
梶尾真治氏の原作との相性はぴったりすぎて、この組み合わせを考えた徳間の編集者はすばらしすぎる。日本の全人口の50%がかつて経験したとされるSF好き非モテオタク男子学生にはたまらない作品です。あー、たまらん。永久保存版。
十三妹(シイサンメイ) (中公文庫)

十三妹(シイサンメイ) (中公文庫)

ついでなので鶴田謙二つながりで表紙と挿絵を担当されているこちらも紹介しておこう。これは十三人の美しい妹たちが「お兄様」「お兄ちゃん」「あにき」「にいにい」などと言って意味も無くあられもない格好でわらわら寄ってくる、というお話ではない。
中国の武侠小説「児女英雄伝」をベースに、明治生まれの著者が昭和40年に書いた「ライトノベル」である。主人公は女賊「十三妹」(名前でした)。忍びの達人にして武術の腕前は天下無双の絶世の美女!の十三妹は、科挙の試験に挑戦しようとする安公子の第二夫人となり、安公子を科挙の第三位で合格させようと、闇の世界で好敵手白玉堂と大活劇を繰り広げるのだ。
今読んでみると、ちょっと古いなーと感じる部分も多いのだが、特に感じたのは、十三妹の相手役を誰にするかという配役の部分。著者は白玉堂が好きらしくて、十三妹と白玉堂のプラトニックなエピソードが結構出てくるんですが、白玉堂のキャラクターは頭はちょっと悪くて直情的、世渡りがうまくて武術は最強、という今ではちょっとあり得ない悪漢タイプ。おそらく当時の読者は白玉堂に感情移入していたのかもしれないけど、今の読者は多分著者に微妙にバカにされているっぽい安公子のほうに自己投影してしまうんじゃないかなーと思う。なので、ラストはかなり切ない終わり方だったなぁ。
解説の田中芳樹氏がこの作品が朝日新聞に連載されていた当時小学生で、毎日新聞を切り抜いては大切に箱にしまい、ワクワクしながら読んでいたことを告白している。個人的には鶴田謙二の描く十三妹がかわいすぎて挿絵だけで十分に満足できる。