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- 作者: マッテオ・モッテルリーニ,泉典子
- 出版社/メーカー: 紀伊國屋書店
- 発売日: 2008/04/20
- メディア: 単行本
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前半は、いかに人間の頭脳が本人は合理的な判断をしているつもりでも、そうではないことをしているかという事例を、ケースごとに紹介してくれる。それぞれのケースごとに例題が出題されるので、自分自身がそのおかしな判断をしているのがわかって非常に面白い。たとえばこういう感じだ。
今日は土曜日で、大好きなオペラがある。
あなたはうきうきと劇場に出かける。入口に近づいたとき、二万円もしたチケットをなくしてしまったことに気がつく。
さてどうしますか?チケットを買い直しますか?
さて、みなさんはどうだろう。ちなみに私は買わずに家に帰る。私の部下に聞いたら彼女は買いなおすという。では次の問題。
さっきと同じ設定で、いまあなたは劇場の入口にいる。
けれども今度はチケットをなくしてしまったのではない。チケットはまだ買っていないのに、上着のポケットにあったはずの二万円が見当たらないのだ。
さてどうしますか?チケットを買いますか?
さてみなさんはどうだろう。このケースだと私はチケットを買ってしまう。私の部下に聞いたら彼女はこの場合は家に帰るらしい。
ここで面白いのは、経済的な観点だけ見れば、ジレンマは全く同じで、どちらにしたって二万円損するわけだし、どちらの場合もオペラを見るか見ないかどちらしかないのだから、合理的な判断をすれば正反対の答えは出ないはずなのに、大多数の人が私のように正反対の判断をくだしてしまうことだ。
この本は、そうした人間がおかしな(合理的でない)判断をしてしまうケースをいくつも挙げている。「選択肢の誘引効果と妨害効果」「選好の逆転」「保有効果」「コンコルドの誤謬」「アンカリング効果」「小数の法則」「フレーミング効果」「損失回避性」「プロスペクト理論」など、それぞれ勉強になって非常に面白い。なるほど人間は感情の生き物だと改めて感じ入ることだろう。これだけでも十分、本一冊分の内容だと思う。
この本がすごいのは、後半でそうした知識を踏まえた上で、現実問題にどう対処していくか、いかに騙されずにいられるか、という話と、なぜ脳はそのようなエラーをおこしてしまうのか?という脳の内面にまで踏み込んだ「神経経済学」の話にまで発展してしまうところだ。最初にビジネス書として紹介したけれども、全然そんな枠にはおさまらない本なのだ。知的好奇心をとても刺激してくれる非常によい本だと思う。。