十津川警部 アキバ戦争 (トクマ・ノベルズ)

十津川警部 アキバ戦争 (トクマ・ノベルズ)

大御所、西村京太郎先生の437作品目の舞台は、何と秋葉原!ということで十年ぶりぐらいに十津川警部シリーズを読んでみました。
アキバのメイドカフェメイドさんの誘拐事件発生!十津川警部は、メイドさんの熱烈なファンである「城萌え三銃士」たちと共同戦線をはり、事件の解決に挑むが…、というストーリー。
えーとですね。
残念ながら、駄作としか言いようがありません。西村京太郎先生ならではの切れ味の鋭いトリックとロジックは影も形も無く、ゴーストライターが書いたんじゃないですか?というレベル。アキバどうこう以前の話で、ストーリーとしてどうなんだこれは。
でも買いなんです、この本。
なぜかというと、山前譲氏が編纂した西村京太郎氏の年譜と全著作437作品のタイトルと刊行日と版元のリストが巻末に収録されており、実は本編よりこっちのほうが面白いからなんです。知ってました?西村京太郎先生が昭和37年には、トーハンでバイトしてたなんて。
著作リストも、同じコンテンツをどれだけ出版社が使いまわしをしているのかが全部わかるというのが画期的で面白いのです。たとえば、昭和48年に毎日新聞社から刊行された「鬼女面殺人事件」という本は、昭和52年に文華新書に、昭和56年に徳間文庫になったあと、昭和62年に西村京太郎長編推理小説選集の6巻に収録され、平成7年に飛天文庫からまた出され、翌年にはトクマノベルズで出たかと思うと、平成13年には青樹社文庫になり、平成16年には廣済堂文庫から出されるという、すさまじい使いまわされ方をしておりまして、合計8回も新刊として出されたことになります。
レーベル化される順番も面白いですね。たとえば講談社ノベルスから最初に出た作品は、通常まず講談社文庫になり、その後光文社文庫になりますが、最初にカッパノベルスから出た作品は、まず光文社文庫になり、その後講談社文庫になります。ところが、時々その法則が崩れて、講談社ノベルス講談社文庫⇒徳間文庫になったり、カッパノベルス光文社文庫⇒文春文庫になったりするのですが、どういう条件のときにそうなるのかよくわかりません。トクマノベルズで出た場合は徳間文庫で一次文庫化されるのは決まってるのですが、二次文庫が講談社祥伝社、光文社、双葉社、ハルキ文庫と一定ではありません。ジョイノベルスにいたっては、一次文庫先が、すでにバラバラです。見ていて飽きないリストです。