ローマ人の物語〈32〉迷走する帝国〈上〉 (新潮文庫 し 12-82)

ローマ人の物語〈32〉迷走する帝国〈上〉 (新潮文庫 し 12-82)

ローマ人の物語〈33〉迷走する帝国〈中〉 (新潮文庫 (し-12-83))

ローマ人の物語〈33〉迷走する帝国〈中〉 (新潮文庫 (し-12-83))

ローマ人の物語〈34〉迷走する帝国〈下〉 (新潮文庫 し 12-84)

ローマ人の物語〈34〉迷走する帝国〈下〉 (新潮文庫 し 12-84)

73年の間に皇帝が22人も入れ替わったローマ帝国三世紀の危機の時代。皇帝22人のうち、14人が謀殺、2人が戦死、2人が自殺、2人が病死、1人が獄死、1人が落雷による事故死とみんなロクな死に方をしていない。私はこの中で、カラカラぐらいしか知りませんでしたが、中にはマクシミヌスとかヴァレリアヌスとかゴティクス、アウレリアヌス、プロブスといった、もしこの人たちが悲劇的な死を迎えなければ、ローマ帝国の運命は大きく変わっていたかもしれないのに、と思わせる優秀な皇帝もいたのに、皮肉なものです。
今回も塩野七生大先生による、塩野史観は大炸裂しており、非常に読み応えがあります。ローマ帝国の衰亡は、カラカラ帝による身分制撤廃による影響が大きな原因であるということ、ササン朝ペルシアのシャプール一世の評価、地政学的見たオリエントの防衛線とドナウ河防衛線の違い、民族大移動の実態、キリスト教はなぜ広まるのに時間がかかったのか、など、本当に勉強になります。
ところでこのローマ人の物語に塩野史観によって度々登場する話として、国家が何よりも優先しなければならない二大責務は、国民の「安全の保証」と「食料の確保」であるという話があるのですが、今の日本の為政者は、その意味で微妙な立ち位置にあるような気がしますね。評価A+