ブックファースト新宿店

chakichaki2008-11-09

ブックファーストが総力を結集したといわれるブックファースト新宿店がオープンしたので行ってみました。業界的には立地が変なところにあるからどうなのかな、という声が多かったのですが、行ってみたら新宿駅の西口から歩いてたった3分じゃないですか。渋谷にあったときよりも遥かに便利になった気がします。というか、紀伊国屋ジュンク堂よりも全然駅に近いよ。信号待ちもしないでいいし雨に濡れないし。むしろいい立地なんじゃないんですか?
というわけで、都庁までの殺風景な地下通路を通って、コクーンタワーにやってまいりました。この店はB1とB2の2フロアに分かれているのですが、地下通路がB1.5ぐらいの位置にあってどちらのフロアもガラス張りで中が見えるように設計されています。これ大事。
ビルの構造上、売場が変な形の7つのフロアに分断されているのですが、それを逆手にとって、この店は店舗をAからGまでの7つのゾーンにわけ、それぞれのフロアに個性を持たせることで世界観を演出しているんだそうです、というところまでは、予習して知っています。ではまずAゾーンに入ってみましょう。
Aゾーンは、雑誌+新刊+地図旅行という構成。雑誌については「東京マガジンセンター」を復活させたと宣言するだけあって、かなりの品揃え。主な雑誌のバックナンバーはもちろんのこと、リトルマガジンという棚もあって、同人雑誌も取り扱っているようです。旅行ガイド棚も、しっかりと各国の都市地図を揃え、地形図もちゃんと在庫、トラベルグッズも置いてあって及第点でした。しかしAゾーンとBゾーンが特筆すべきなのは、品揃えよりも、カオスな什器配列でしょう。棚を見ながらプラプラしていると、自分がフロアのどこにいるのか、一瞬にして迷子になってしまう恐るべき売場なのです。これはかなり慣れが必要ですね。思いもよらない通路だとか売場に出くわす構造になっていますので、何か発見できるかもしれないというワクワク感がでていて、私はこういう売場は好きです。Aゾーンの評価は90点。
次のBゾーンは、文芸とアートです。ここの棚の品揃えはすごいな。そして棚の編集精度もすばらしい。この新宿店は、各店の店長クラスの方が各ゾーンのチーフをつとめておられると聞きましたが、この棚は私には作れないハイレベルな精度。素直に感心。これはシステムでは実現できない棚だなぁ。Bゾーンは95点。
次に反対側のDゾーンに行ってみましょう。ここは文庫・新書・コミック・実用書のゾーンです。棚のレイアウトは普通。売場も普通です。文庫やコミックの棚は前平台2面で平積展開。わざとなのか偶然なのかわかりませんが、奥のサブ動線のエンド平台が主動線から見えるように途中からレイアウトがずれています。実用書のほうは、前平台なしの高いスラント什器で通路幅がほとんどの箇所で1100だったので、密度の高い売場になっています。什器の色が白で全什器に間接照明がついていて明るいので圧迫感はあまり感じませんでしたが、そうでなかったらちょっとつらい売場になっていたかもしれません。これは店舗デザイナーの勝利です。実用書は3段分が面陳列になっていて、タイトル数はジュンク堂に比べると明らかに持っていないように見えますが、面陳商品のセレクトで勝負しているといったところでしょうか。でもここは75点ぐらい。レジまわりのフェアには力がはいってるんですが、レジ周りの売場自体が、什器配列の構造上死角になってしまっているので、せっかくの作りこみが全然目立ってないという欠陥があります。

次に行くCゾーンは、ABDとつながっていないので、いったん外に出ます。Cゾーンは児童書・語学・学参・洋書のフロアです。このCゾーン、児童書エリアがなかなか面白い。最近のブックファーストの特徴とも言える柱周りの八角形提案棚を中心に隙のない売場を作っています。特に驚くような売場ではないのですが、スタッフの愛情がとても感じられる売場でした。なにせ児童書の棚に、全スパン、什器棚の背面にその棚の雰囲気に合わせたファンシーな壁紙(包装紙?)がはられているんです。これだけで売場の雰囲気が全然違います。「スタッフによるはじめての一冊」フェアとかも本に対する愛情が感じられてとてもよかったですね。85点。
では階段をおりてB2へ。B2は主に専門書フロアです。まず理工書、コンピューター、医学看護のGゾーンですが、ここはスルーします。いや、単純に私がこのジャンルの専門知識が無くて売場のよしあしがわからないだけなのでご容赦を。お客さんも多くいらっしゃったので多分いけてる売場なんだと思います。
次にFゾーンは人文書ですが、心理学と哲学思想と歴史書のフロアでした。ここが一番人がまばらでしたね。売場も普通っぽかったかなぁ。売場の奥に事務所なのかバックヤードなのかがあるらしく、壁で仕切られておらず、棚の上ごしにスタッフさんの会話が丸聞こえだったので、ちょと注意されたほうがよろしいかもです。
最後にEゾーンはビジネス書ですが、ここは品揃え的にもレイアウト的にもちょっと微妙でした。EゾーンはちょうどAゾーンの真下にあたる場所なのですが、このゾーンは建物の柱の構造上、どうしても売場レイアウトがカオスになってしまうのが避けられないようなのです。Aゾーンは新刊と雑誌ということで、その迷宮のような売場配置もプラスに働いていたのですが、ビジネス書のように目的買い中心のジャンルになると、迷宮のような売場は明らかにマイナス。平面図で見るとそう複雑に見えない売場も、実際に本を探そうと思ったら、検索機なしではほぼ不可能と思えるほど探しにくい売場でございました。Eゾーンはギリギリ70点ぐらいかなぁ。私はここでは欲しいビジネス書は探せませんでした。
全体的に見て、目的ナシにぷらぷら見に行く分には楽しい店だと思いますが、目的買いにはちょっと向いていないように思いました。一番のライバルは、紀伊国屋の新宿南店だと思いますがどのような戦いが繰り広げられるのか、そしてかつての渋谷店がそうであったように、改装してどんどんいい店っぷりに磨きをかけていって欲しいですね。わたしの見るところ、この店は都心型大型店の中で、現時点で最高レベルのクオリティであるように思います。総合評価85点。