本質を見抜く力

本質を見抜く力―環境・食料・エネルギー (PHP新書 546)

本質を見抜く力―環境・食料・エネルギー (PHP新書 546)

サイゾーの本の特集号で、切れ者の石破農水相がオススメしていたので、買ってきて読んでみました。
この本は、かなり目からウロコです。
石油高騰、温暖化、水不足、少子化、食料自給率、農地獲得競争、といった問題に、現在日本がもしくは世界が直面しているということは、さすがの私も知ってはいたのですが、マスコミの普段の報道を普通に聞いているだけではなかなか気づけないこれらの問題の本質を、鋭く浮かび上がらせてくれる良書です。さすがに石破さんがオススメするだけのことはありました。養老先生の新書読むなら、「バカの壁」より断然こっちですよ。
第一章は、人類の歴史はエネルギー争奪の歴史である、という本質を語ってくれます。日本がなぜ第二次世界大戦を始めてしまったのか?なぜ桓武天皇は奈良から京都に遷都したのか?なぜ江戸時代に人口増加は止まってしまったのか?など、すべて、国民が使えるエネルギーの総量に関係しているという話で、文献史学だけではそうした問題の本質は捉えにくい。この本質を理解していれば、今後世界がどのように動いていくかが、見えるというような話です。養老先生の対談相手である武村先生という方が、元国土庁の河川局長だった方で、何を説明するにもデータを持ち出してくる自称データ魔なので、どの話にも説得力があります。これによると石油を無限に消費できることを前提にすべてのものが構築されているアメリカは、近い将来確実に崩壊するとのこと。
第二章は、温暖化の話。武田邦彦先生の二酸化炭素の排出規制は無意味だ、という話と結論が同じになっています。温暖化対策にお金をかけるのではなく、温暖化後の環境を予測してインフラを整備すべきという話でした。四十年後は、北極の氷がすべて消失しており、日本は台湾と同じぐらいの気候になり、北海道が米の穀倉地帯になる。問題は降雪量が減ることで水資源が大幅に減ってしまうので、ダムを整備する必要があるという話でした。なるほど。
第四章の水問題も、第五章の農業・漁業問題、第六章の農地問題も、大変勉強になる1冊でした。おすすめ。評価A−