風に舞いあがるビニールシート

風に舞いあがるビニールシート (文春文庫)

風に舞いあがるビニールシート (文春文庫)

ご存知、森絵都さんの直木賞受賞作。
表題作を含め、六編の短編集です。内容については、いつもトラックバックをいただいております(ありがとうございます!)藍色さんの記事のほうが詳しいので、ここでは触れませんが、どれもこれも超絶技巧の粒ぞろいの短編となっておりまして、とにかく素材の調理の仕方が巧い、ものすごく巧いのです。さすがは直木賞というほかありません。
ただ、何というか…、その、多分なんですけど、この本を読んで強烈な違和感をおぼえる人は、私だけじゃないはず。
ここの六編に出てくる主人公たちは、何かしら仕事とプライベート両方に向き合って、悩みながらも懸命に生きている人たちなんですが、どうもその悩みが、伝わってこないんです。というか、私だったら、この部分で多分悩まないし迷わないだろうなぁ、と。もっと言うと、世の多くの男性も、多分同様にこんなことで悩まないし迷わない、というか、そもそもこんな発想にならない、そんな気がするんですね、ちょっと。
そう、多分、一般的な男性の生き方に関する根幹の考え方と、この物語の根幹に流れる考え方が決定的にずれていて、女性視点の描写はものすごくリアルだと感じるのですが、その葛藤を、世の多くの男性は理解できないし、これは誤解を大いに招く表現だとは思いますが、男性はそういう次元でものごとを考えてない人が多いんじゃないかな。
六編中、男性が主人公の話も三編はいってるんですが、そういう意味でうわべだけを技巧的に飾ってるような気がして、ちょっと共感できませんでした。この本は圧倒的に女性の支持者が多くて、男性のファンは少ないんじゃないかと勝手に思ったりしております。
「守護神」みたいな話は、ファンタジーとして読めるから面白かったですけどね。
評価B