本の世界に生きて50年

本の世界に生きて五十年―出版人に聞く〈5〉 (出版人に聞く 5)

本の世界に生きて五十年―出版人に聞く〈5〉 (出版人に聞く 5)

出版、書店業界に生きて50年!の能勢先生のこれまでをインタビュー形式でまとめた本です。
能勢先生は今はなくなってしまった千葉の多田屋(いい店でした)に25年勤めた後、平安堂でFCビジネスをはじめ5年間勤め、創業期のアスキーでパソコン書を出版してヒットさせた後、太洋社で取次も経験され、書店コンサルタントになって15年という、大大大先生です。僕が就職活動していたときに業界研究で読んだのも、能勢先生の本でした。大変尊敬しております。
能勢先生の書店理論は、本当に基本からぶれないんですね。そしてお客様のことを本当によくわかってらっしゃるので、お客様不在の論が目立つ出版業界にあって、おっしゃっていることに常に納得感と安心感があります。
この本はそんな能勢先生の多田屋時代、平安堂時代、アスキー時代の業績や思い出および裏話、当時の社会情勢と書店のあり方など、ものすごい量の経験知がつまっておりまして、書店員にとっては現在の書店がどのような土台の上に築かれてきたのかを学ぶ上で、おそろしく勉強になることかと思います。
あと、付録に「消えた書店」というのがついていまして、どのような書店が、表舞台から姿を消していったのか、98年に遊友出版から刊行された『列島書店地図―激戦地を行く』との併読が推奨されています。(この本は、比較的中古でならまだ入手しやすいと思います)
これを読んでちょっとショックだったのは、僕が昔、横山光輝三国志を希望コミックスの新刊で出るたびに購入していた湊川の漢口堂本店がなくなっていると書かれていたこと。阪神大震災湊川の家が全壊して以来、湊川公園には行っていなかったので全然そんなことになっていたとは知らず驚きました。あと阪急六甲の南天荘書店もヘビーユーザーでしたが、今はブックファーストになってますね。さんちかのコーベブックスも無くなっていて、こないだ見に行ったら福家書店が出来ていました。自分が客として愛用していたお店がなくなると本当にさびしいものですね。