32歳書店員、独身。

オレの宇宙はまだまだ遠い

オレの宇宙はまだまだ遠い

あの益田ミリさんが、書店員を主人公にした作品を描いたということで早速購入。しかも今回は益田作品ではとても珍しい男性が主人公。

土田新二、32歳、独身
手取り25万円
定年まであと、28年
このまま何ごともなく働きつづけられたとして
オレ、どんなオヤジになってんだろう?
結婚して、子供を大学に入れてマンションのローン払って
そういうことができていたらいいよなー
って思ってるオレは
夢がないのか
それとも贅沢なのか

という、いつもの益田ワールドが繰り広げられている。いつもの、って書いたけど、今回は益田ミリ本人が作品の中に登場してきたりしてちょっと珍しいことになってる。特に最後の番外編にはビックリだ。もちろん、益田作品が思わず自分の人生の意味を考えてしまう劇薬マンガであることには変わらないので、注意が必要だ。今回も名言が多数。

アイツ、もうオレのこと忘れてんだろうなぁ
で、オレのことは忘れても
オレの部屋で読んだ『スラムダンク』は一生忘れないんだろうなぁ
いや、いい
スラムダンク』に負けるなら本望だぜ!

とか、めっちゃ共感する。もちろん、一番最後の181ページの言葉もよい。
しかしまあ、とっくの昔に32歳という年齢が過ぎ去りし日々になった今となっては、こういうことに悩めていた時代はまだ良かったなあという気もしている。
大体定年まであと何年とか、そんなことを考えている余裕、今の三十代書店員にあるのだろうか?
定年になるまでに、この右肩さがりの書店業界、もうなくなってるかもしれない。そんでもって丁度会社を解雇されるであろうころにはもう転職できなくなってる年齢だし、本に詳しくたって他の業種じゃ何の役にも立たないし、年金には頼れそうにないし、どうやったら食っていけるだろう、とか、そういう悩みの方が切実だったりしませんか?
リアルすぎてドン引きするかもしれないけど、土田くん、人生の意味を考えるのもいいが人生設計も考えた方がいいかもよ。このまま何ごともなく働き続けられたとしてなんて、かなり危うい仮定だと思う。
そんでもって、それが全部わかった上で、書店で働き続けるんだとしたら、そこに人生の意味を見出すべきだと思うんだ。
なーんて