おおかみこどもの雨と雪


久々にお休みがもらえたので、「おおかみこどもの雨と雪」観にいってきた。月曜日の朝ということで劇場はファミリーや学生さんが多かったように思うが、完全に大人向けの話だった(学生向けですらない)し、狼という要素を抜いてしまったら、地味な田舎暮らし家族ドラマをアニメでやってるだけなわけだから、こどもたちの反応は微妙だったなー。
まあ、でも僕のようなひそかに二児の父をやっている中年にとっては、なかなかぐっとくるものがあって、涙じわじわもののストーリーであった。なぜかこどもが生まれる前のほうが泣けたのだが、多分泣けるシーンは観る人によって変わる、そんな作品である。間違いなく「時かけ」や「サマーウォーズ」よりもいい作品に仕上がっているのだが、見る人を選ぶのでそう思わない人も多いかもしれない。
物語は、おおかみこどもの雨と雪の母親である花が、子育てをがんばる話、である。とてもシンプルだ。
そのがんばり方が実に献身的で、男性から見て、花は理想の妻であり理想の母親、として描かれている。キャラ的にこの映画を観て花に好感を抱かない男性などいないだろう(特に二児の父であれば)。
でも、この花を見て女性の方はどう感じるんだろうな、とちょっと疑問に思ってしまったのは事実。「こんなヒロイン現実にはいないよ」っていうファンタジー度合いが、狼男というファンタジー要素を凌駕してしまっているのである。
実際、これ、狼がいてもいなくても話としては何とか成立しますからね。都会で乳幼児を育てるのは、おおかみでなくったって大変なわけだし、多分、花は自分のこどもが、おおかみこどもじゃなかったとしても、育児放棄しなかったと思うし。
でもだからこそ、そんながんばりすぎるファンタジーな花、に、自分の妻の姿を投影しちゃって、ぐっときている自分がいる。
花は子育てにこんなに真剣に向き合い、こんなにがんばっているのに、それに比べて僕ときたらどうなんだ、この有様だ。父親としてなんか助けてあげられることは他にないのか?
そして自分のこども時代のことも思い出す。僕はどのように育てられただろうか、父親や母親は僕に何をしてくれただろうか。
今日、30年ぶりに自分がこどもの頃に育った街に戻ってみて、いろいろなことを思い出しながら、炎天下3時間歩き回るという愚行をおかしたのはそういう理由である。熱中症になるかと思った。おそろしい映画だ。