珈琲店タレーランの事件簿

タイトルといい、この表紙といい、タイミングといい、あまりにもあんまりな売り出し方だったので、正直引いてしまい、そのまま売れるにまかせて幾星霜、もう今更読むのも何だかなあという書店員の方はどれくらいいらっしゃるのでしょうか。
そのうちのお一人である某店の某Tさんに「私は読むことはないと思うので、代わりに読んでぜひ感想を聞かせてください」と、この作品を超強力にオススメされましたので、読んでみることにしました。それにしても何というオススメの仕方でしょうか。
この作品ですが、私はてっきり先入観で、この表紙の女の人が探偵役のヒロインでカフェを営業していて、それに恋する主人公がお客さんとして店に持ち込んでくる日常的なちょっとした謎を、持ち前の明晰な頭脳で解き明かしてくる連作短編モノだとばかり思いこんでいたんですが、いやいやどうして、まったく実際その通りでした。読者の期待を裏切らない作品で素晴らしいの一言です。
ちょっと想像と違ってたのは、
トリビア的な雑学が多くて知識量も多く文章も見た目よりは意外と硬派だったこと、
ヒロインの美星バリスタが結構そのへんにいそうな割と普通の女性キャラ(ただし頭の回転は超絶にはやい)で萌えキャラではなかったこと、
ミステリ的にも割と想定以上の大きめの仕掛けがあったこと、
の三点でして、いずれも私の期待を上回るものでしたので、好感度高いです。
なのであのような売り出し方をしなくても、この作品の完成度があればそれなりに売れたかもしれないとは思います。でも、似ているようで実は似てない、でも全体的には似てる、という絶妙のポジションがあってこそのこのヒットだと思いますので、やはりあの売り出し方で正解だったんだろうなあと思います。
ちなみにバリスタの決め台詞は、「全然、違うと思います」と「たいへんよく挽けました」です。
もし映像化されるのでしたら、この台詞がよく似合う方に演じてもらいたいですね。
評価B+