紀伊国屋書店の渋谷店の文庫フェアについてです。
一書店の一フェアが、ここまでボロカスに言われる世の中で、我々は仕事しているのだということを、あらためて認識した次第です。
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http://papuriko.hatenablog.com/entry/2015/01/07/112129
上記読んでいて、同業者として気の毒に感じたので、ここはあえて応援のエントリを書くことにします。

まず最初に、この店はちゃんと自分で選書して自作のコメントPOPつけて、フェアを実施するなんて、それだけですでに素晴らしいと思います。
日本の書店の半分以上は、多分それすら出来てない。日々の激務をまわすのが精一杯で、出版社から送られてくる日本全国均一のフェアセットを入れ替えるだけで精一杯、売れ筋商品を調達し、死に筋商品を見極めて返品するという多忙な日々の中で、自作コメントを書く余裕すら失っている書店のいかに多いことか。紀伊国屋書店渋谷店の方たちは多分、そんな業務をこなしつつも疲れた体に鞭をうち、少しでも自分の愛している本を世の人々に送り届けようという純粋な想いから、フェアを組んだのでしょう。
それがわからない人もいるし、そういうことを想像できない人が少なくないことも知っているし、そもそもそれはお前ら店側の都合であって客には何の関係も無いんだよと簡単に斬って捨ててしまえる人が多いことも知っていますが、そうじゃない私のような人もいるので元気出してほしいです。

次にフェアやPOPの内容についてですが、確かに素晴らしいものとは言えなかったかもしれません。それはもうあちこちで指摘されているので自明のことだと思います。でもまあ私見ではありますが、ネットで叩かれても文句言えなさそうなレベルの代物は、世の中にはもっとゴロゴロ転がっているように思いますし、それらと比べるほどにひどかったようにも思えません。自らの非は認めた上で、それ以上に世間は過剰なんだと思ってたほうがいいと思います。今回の教訓を糧に、次回はそうならないよう研鑽を積み、新たなフェアに挑戦して欲しいです。
最後に、店には価値観の違う色々な方が来られます。今回のように自分たちの価値観とは違う方から、自分たちの提案を全否定されるようなことは、今後も起こりうることでしょう。でもそのときに、自分を曲げないことが大事だと思います。
今回、すぐにフェアを撤収して「そんなつもりじゃなかった」コメントとともに謝罪されてましたが、自分たちで意志をもって売場をつくったのなら、最後まで貫く覚悟でやって欲しいですね。誰に何と言われようと、私はこのフェアでお客様を感動させたい、本を届けたい、という覚悟をもって、フェアの内容に責任を持つべきだと私は思うのです。何か言われて、責任をとれないレベルのフェアは、やるべきではない。
誤解を恐れずに言うと、お前らに好かれたいがために読むわけじゃねぇんだよ!と言われたら、お前に好かれたいために薦めてるんじゃねぇんだよ!と言い返せるくらいの強い気持ちでフェアをやんなきゃってことです。その覚悟がなく中途半端な気持ちを露呈したら火傷します。ま、今回については元が元なんで、そんなことを言ってしまったら火傷どころではすまなかったでしょうが。
ということで、来週渋谷に行く用事があるので、見学に行きます。逆境に負けずに頑張ってくださいね!