本屋大賞読書週間

モダンタイムス (Morning NOVELS)

モダンタイムス (Morning NOVELS)

本屋大賞ノミネート作、最後の一作です。今年の本屋大賞読書は例年に増しての苦行でした。何とか期限内に読み終えることができてほっとしてます。
さて本作は、「魔王」の続編ということで発表されておりますが、昨年の本屋大賞受賞作である「ゴールデンスランバー」と同時並行で書かれていたからなのか、「魔王」よりもむしろ「ゴールデンスランバー」に結構似てます。それにプラスして「グラスホッパー」の要素を加えたらこんな小説になりそうです。つまり面白いです。さすが伊坂!
「検索で国民が監視されているという」テーマから出発した小説ですが、まあこれはフィクションでもなんでもなく、今現在も普通に行われていることなので、それ自体に目新しさはありません。それよりも、永嶋丈が語る「国家生物論」がなかなか興味深い話。国家は、国家を延命させるためだけに存在していて、そのためには生物のように進化も遂げることもあるのだ、という理論が作中でとうとうと語られるのですが、ある意味これは真実の側面を言い当てている理論で、ちょっと感心しました。本当はそうじゃないけどね。
ゴールデンスランバー」と比較すると、なんで奥さんこんなに強いの?とか、桜井ゆかり結局なんなの?とか、細かい部分の伏線をいまひとつ回収できてない部分が、小説としての完成度を若干落としてる感じがするので、評価は少々きびしめ。それでもAクラス。
評価 A−