人はどのようにして買う本を決めているのだろうか?
盛岡のさわや書店さんの謎の文庫本Xのニュースを読む。
こういった書店での販売努力の企画は大好きで、すごく応援したくなる。
先日も三省堂書店さんの池袋本店で、夏の名作文庫を販売する面白い企画をやっていたので思わず購入。どんな企画かというと名作文庫40タイトルを独自に選出し、番号をつけて、おみくじで選んでもらうのだ。
これがすごいのが、中が確認できないように袋づめされてるだけじゃなく、カバーも栞も統一されたデザインで用意されており、おみくじまでちゃんと作ってある点だ。
おみくじにはヒントが書いてあり、たとえば私の引いた3番のおみくじにはこう書かれている。
今宵のよふかし本の手掛かり
【作者】東京帝大の英文科講師となった際、生徒から授業が不評で神経衰弱になった
【作品】九州の田舎から上京した若者が都会的な人々やものと出会い「世界の見方」を改める物語
凝っている。
これが本の定価362円+税で買えてしまうのである。その準備作業がどれだけ大変か想像がつく身としては素直に感動してしまう。なんてすごいんだろう。
ところで、今回のタイトルであるが、こういう事例を考えたとき、人はどのようにして買う本を決めているのかということが気になってくる。
そもそも本というのは、読む前に購入することがほとんどなわけだから、断片的な手がかりだけで本を買うかどうかを決める。
それは、表紙であったり、著者であったり、値段であったり、あらすじであったり、パラパラとめくってみたときのフィーリング(これが一番大事だったりする)であったりするのだが、最終的かつ総合的な決め手は人によっても、その時々によっても異なるものだろうと思う。
今回、さわや書店さんの企画で興味深いのは、値段以外の書誌情報が全くわからないのに売れているという点。「この本を読んで心が動かされない人はいない、と固く信じています」「それでも僕は、この本をあなたに読んで欲しいのです」というメッセージだけで、お客様は本を購入されているのだ。
これは書店とお客様の信頼関係が成り立っていないと起こり得ない現象だ。そして信頼関係が成り立っていれば、こうしたおすすめだけのどんな内容なのかまるでわからない本でも、買っていただけるだという、商売の本質にも関わる話でもある。すごいものだ。
ところで文庫本Xって、何なんでしょうね。気になってしょうがない。