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ローマ人の物語 (18) 悪名高き皇帝たち(2) (新潮文庫)

ローマ人の物語 (18) 悪名高き皇帝たち(2) (新潮文庫)

カリグラ帝の時代。前皇帝ティベリウスの帝国への功績は大だったが、それを理解しないローマ市民には人気がなかった。ティベリウスの後を継いだカリグラは、市民の人気を最重視するあまり、ティベリウスと真逆の人気取り政策を次々に実施していく。
しかしこのカリグラ帝により、ティベリウスが二十数年かけて築き上げてきた財政がわずか2年で破綻、外交上でも失政をかさねる最低の治世に。
まるで十二国記の「華胥の幽夢」に出てきた才の国のような話なのですが、史実なのが面白いですね。君主というものと政治を考える上で。国民が正しいとは限らないわけ。
ローマ人の物語 (19) 悪名高き皇帝たち(3) (新潮文庫)

ローマ人の物語 (19) 悪名高き皇帝たち(3) (新潮文庫)

カリグラ帝暗殺のために、突然夢にも思っていなかった皇帝の座に、脅迫され強制的に据えられたクラウディウス帝。体が病弱で期待されていなかった彼は、歴史学者でもあった知識を駆使して意外にも善政をしく。
しかしそんなクラウディウスの妻は「悪妻」だった。ということで権力を握ろうとした悪妻に暗殺されてしまうクラウディウス帝。持統天皇みたいなやつですね。
ローマ人の物語 (20) 悪名高き皇帝たち(4) (新潮文庫)

ローマ人の物語 (20) 悪名高き皇帝たち(4) (新潮文庫)

後をついだ皇帝ネロはローマ皇帝の中で「暴君」としてもっとも有名だが、「暴君」は本当なのか?を検証する塩野七生。外交面では非常に大きな功績を残したネロだが、内政面では失政が続く。本人の性格が、やや「アーティスト」寄りで極端だったことが災いになった。知らなかったのですが、ネロは皇帝のくせに歌手になることが夢で、自作の歌を披露するためにコンサートを開いたりしているのです。まぁ、確かにそんな皇帝は信任できないかもしれません。諸事情もあるのですが、結果的に自分の母と妻を殺害し、おまけに一番有能な将軍を殺してしまったのが、いけませんでした。
本人は暴君では全くなく、ただ単に歌を愛する「オタク」ちゃんだったのですが、趣味に生きる人は皇帝などになっちゃいかんかったのね。ちなみに、さほど暴君でもなかったネロが暴君として有名なのは、初期のキリスト教の信者を陰謀の疑いで虐殺してしまったからで、後世のキリスト教文化の西洋において「悪帝」の象徴にされてしまったからであるそうです。知りませんでした。
ローマ人の物語 (21) 危機と克服(上) (新潮文庫)

ローマ人の物語 (21) 危機と克服(上) (新潮文庫)

ネロのあとを継いだガルバは、何もしない皇帝で、皇帝の仕事すらしなかったので、わずか数ヶ月で倒される。ガルバのあとを継いだオトーは、優秀だったかもしれなかったのだが、ガルバの怠惰のせいで発生した反乱を収拾できず、自殺。オトーを内乱でやぶったヴィテリウスは、天狗になっていたため、天下の情勢が読めず、謀反で殺害される、という1年の間で3人も皇帝が代わるという三皇帝時代。
ローマ人の物語 (22) 危機と克服(中) (新潮文庫)

ローマ人の物語 (22) 危機と克服(中) (新潮文庫)

混乱の極致にあったローマ帝国を収拾したムキアヌスとヴェスパシアヌスの話。ヴェスパシアヌスは天才ではなかったが健全な常識人で、フラヴィウス朝を創始する。このヴェスパシアヌスと息子ティトゥスの善政のため帝国の財政は健全化。ヴェスパシアヌスの後をついだティトゥスは、国民に尽くすタイプの理想の皇帝だった。しかしヴェスヴィオ火山が噴火し、ローマに疫病が発生。そうした災害によく善処したティトゥスだったが無理がたたったのか、わずか2年で病没する。あまりにも早すぎる死だった。
ローマ人の物語 (23) 危機と克服(下) (新潮文庫)

ローマ人の物語 (23) 危機と克服(下) (新潮文庫)

ティトゥスが早く死んでしまったため、ろくな経験もつまないで皇帝になってしまった弟のドミティアヌスは、ティトゥスとは正反対の専制的な性格な皇帝だった。
しかし、このドミティアヌスは、「職人皇帝」ティベリウスの過去の政策を引っ張り出して勉強し、帝国の防衛上「リメス・ゲルマニクス」を建設し、大きな功績をあげる。これといった失政もなかったドミティアヌスだが、身内に暗殺されてしまう。元老院に人気のなかったこのあとを継いだのが五賢帝の一人目ネルヴァ。ただ、これを読む限りネルヴァのしたことと言えば、跡継ぎにトライアヌスを指名したぐらいのような気がします。