おぼうさん、はじめました。

おぼうさん、はじめました。

東大新卒の著者が飛び込みで就職したのは、お寺。今のお寺って「無線LAN完備の寺院内カフェ」みたいな珍妙な世界になっているようなのですが、そこに青臭い理想と夢をぶつけ、今の寺院界の現実を直に体験しながらも、そこに居場所を見つけていこうとする新米僧侶の日記です。「明るい浄土真宗生活」を紹介する前半があまりにも面白くなくてこれは失敗したかと思っていたのですが、現在の仏教教団に対する疑問が論じられてくる後半から俄然面白くなってきて読みふけってしまいました。

新卒坊主もそろそろ丸2年。ここにきて、やっと分かってきたことがある。
仏教を生きることと僧侶になることは、まったく何の関係もなかったのだ。
(中略)要するにぼくは、国や企業に就職する代わりに、宗教法人に就職しただけだったのだ。ぼくの職業は、法事や葬式というセレモニーを営むポクポク寺のムニャムニャ僧侶。ときどきは教団の事務所に座って給料をもらうサラリーマン。

という告白も登場。どうも著者によると今の日本の仏教教団(浄土真宗)というのは、あくまで「仏教ファンクラブ」であり、お坊さんというのは「ファンクラブの管理人」みたいなものらしいのです。だから、釈迦が戒律で禁じている肉食もOK!妻帯もOK!ベンツ乗り回すのもOK!キャバクラで豪遊もOK!なのね。つまり聖職者的な聖性はまったくなくて職業坊主であるとのこと。
著者は一方ではそういう寺院ライフを楽しみつつも、まじめなので「これでいいのか?」と悩みます。そしてそうした現実と向き合いながらも自分の求めているものを表現しようと日々奮闘するのです。
もうね、日記読んでるだけで、この新米のお坊さんが悩みながらも成長していってるのがわかるわけですよ。このクソ坊主!最後のほうはとてもおもしろかったじゃないか!今の日本の仏教界がどんなことになっているのか垣間見られる興味深い本ですよ。評価B