舟を編む

舟を編む

舟を編む

評判がいいので読んでみました。・・・が、最後まで乗り切れないまま読了。こういうこともあります。
この作品は出版社の辞書の編集部が舞台で、言葉に尋常ならざる執念をもつ変わり者の主人公まじめさんが15年かけて1冊の国語辞典を作っていく話です。
辞書を作る作業は非常に細かくてキングオブアナログな特殊な世界で、こんな地味な作業を15年も続けてやるんかー、という現場感はよく伝わってきます。一冊の辞書のために、わざわざそれ専用の紙まで開発するなんて知りませんでした。僕が学生時代から長らく愛用していたのは『岩波国語辞典』でしたが、確かにあの辞書の紙のぬめり感はよかった気がします。電子辞書ではこういう感覚味わえないですよね。
最近は辞書をひくことも滅多になくなりました。もう、何年も辞書をひいた記憶がありません。おかげさまで「あなたの日本語はおかしい」とよくみなさんに言われます。お褒めいただきましてありがとうございます。個性的でありたいといつも思っております。
ストーリーにいまいち乗り切れなかったのは、15年の間に紆余曲折あって、何度もトラブルや辞書刊行の危機に見舞われながら、やっと世に出た!という話のはずなのに、わりとそういう葛藤とか危機みたいなのが、発生した次の瞬間にはさっくりと解決してしまい、大して苦労せずに好きなことできてお金もらえて恋愛勝ち組で人生楽しめていいですよね、的な感慨しか抱けなかった僕のひがみ精神のせいだと思われます。「おまえの精神年齢は13歳でとまっている」とよくみなさんに言われますが、お褒めいただきましてありがとうございます。いつまでも心は少年のままでいたいものです。
でもそんな僕でも最後は泣きました。今度『新明解国語辞典』が7年ぶりに改訂されますね。今後も新しい辞書を見るたびに、必ずこの作品のことを思い出し、そしてその辞書を作った人たちのことに思いを馳せることになるんだと思います。これは、そういう作品なんです。