ネコソギラジカル(下)青色サヴァンと戯言遣い (講談社ノベルス)

ネコソギラジカル(下)青色サヴァンと戯言遣い (講談社ノベルス)

大風呂敷を広げてしまって収集つかなくなってしまった話を、どうやってクロージングするかというのがその作者の力量だと思うのです。例えばエヴァンゲリオンは途中で放り投げられてしまいましたし、ガラスの仮面FSSは終わってすらいません。塗仏の宴のように後半失速してしまう話もあったりします。さしもの西尾維新も苦労したようです。いつもに比べて筆のノリが悪く、結論を言えば最低限の義務は果たしたものの、伏線を半分ぐらい回収せずに終わらせてしまいましたので、一読者としては不満の残る内容でした。まぁ壮大なまま終わるってのは、永井豪デビルマンだとか諸星大二郎暗黒神話だとかごく一部の傑作にしかなしえていない芸当ですので、そこまでは期待はしてませんでしたが、ちょと残念でした。個人的な戯言ベストは1位「クビキリ」2位「クビシメ」3位「サイコロ」4位「ヒトクイ」5位「ネコソギ」でした。「クビツリ」は面白くないです。評価B
僕の見た「大日本帝国」

僕の見た「大日本帝国」

かつて大日本帝国の領土だった場所へ、かつての日本の痕跡を求めて旅をするというルポ。なかなか読ませるし、考えさせられる内容。樺太に始まり、台湾、韓国、北朝鮮満州パラオと訪ね歩くのですが、当時の為政者の変遷に振り回された現地の人の話を聞き、そこに残された神社が戦後どのような運命を辿ったかを比較するだけでも、教わらなかった日本の近現代史が浮き彫りになり非常に興味深かったです。
例えば樺太では神社はソ連軍によって破壊され、頑丈だった鳥居のみ残って放置され荒廃している。韓国や北朝鮮では神社は徹底的に破壊され、ほとんど跡形も残っていない。満州では、日本がかつて中国に侵略した証拠である、として「見せしめのために」大切に保存されている。台湾では国民党が破壊をしていったが、現地の人の尽力によって破壊をまぬがれたものもある。パラオでは米軍が破壊した後、現地の人によって何と神社が再建されている。
この違いを考えるだけで、民族性の違い、歴史観の違い、当時の日本がはたした役割が見えてくるのではないでしょうか。
そう言えばロシアやアメリカは、同じように日本と戦争をして大量の戦死者をだしているのに、中国や韓国と違って靖国参拝については、何も言ってこないだな、とちょと思った。評価B+