いまじん中川戸田店
台北にあるPAGEONEの什器を取り入れた書店が名古屋に出来たと聞いて見に行くことにしました。これまで日本の書店は、バーンズアンドノーブルのスーパーストア型が主流でしたが、書店デザインの流れがここに来て大きく変容しようとしています。この店はおそらくその1号店になるであろう貴重なお店。スケジュールを捻じ曲げて見に行くことにしました。
名古屋駅からわずか2駅、電車で約10分という距離にありながら、野原が広がり、2両編成のワンマン電車が1時間に2本しか来ないという、都会なんだか田舎なんだかよくわからない場所にあるお店です。もちろん無人駅。名古屋は車社会なので電車の本数なんて誰も気にしてないのかもしれませんが、実際名古屋市の再開発地区に指定されているらしく、周囲は空き地もまだ目立ちます。そこに出来た巨大なスーパーの2階にOPENしているのですが、850台停められる駐車場は平日の真昼なのに満車でした。すごいです。
さてお目あてのいまじん中川戸田店はこのスーパーの2階にあります。1000坪の複合店でうち600坪が書店。CD・DVD・GAMEと中古販売をやっています。いまじんは1000坪年間2店舗出店構想という戦略に基づいて出店しているのですが、その戦略に基づいた第一号店です。しかしこの店のクレイジーさ加減は、店舗の平面図を見たらおわかりになるのではないでしょうか?本当にこんな店を出店し続けるんですかー?
なんなのでしょう、この左側のエリアの什器配列は?まるで迷路ですね。実際、什器の高さが2メートル以上あるので店内は本当に立体迷路になっております。では迷宮案内に行ってみましょう。
まずは雑誌の棚。ここは什器の配列が「く」の字が連なった形になっています。設計者曰く「名古屋といえばドラゴンズなので、龍をイメージした配列にしてみました」だそうです。冗談みたいな理由でそんな形にされてしまったのね。ただ幸いなことに想像していたよりは空間の使い方がうまく、あまり違和感はありません。
雑誌棚の正面には文芸ゾーンがあります。ここの売りは9メートルに及ぶオール面陳多面什器でしょうか。うーん、これはどうなんでしょうか。悪くはないけど、あまりいいとも思えないかも。変な什器が目立ちますが、棚の方はわりと普通に作ってます。
文芸ゾーンを抜けました。ここはパソコン書や資格などの書棚ですね。高い什器の間に棚の高さがデコボコの中央什器を配置しているという、完全にPAGEONEのパクリ売場です。しかし、この什器はアート&デザイン棚やホビー棚でこそ生きる棚なのですが、実用書にこんな什器を使ってどうする!?本来この什器はこんな場所で使うものではないのですが、なんか勘違いしているのでしょうか。勘違いといえば、棚の上になぜか二宮金次郎の銅像が飾られているのがとても変。ここは校庭ですか?
実用書、児童書の棚にやってきました。ここは主婦層を意識してか什器高が一気に1500ぐらいになっていて見通しがよくなっています。迷路は迷路なんですけどね。店内にはおそらく迷う人用にところどころにインターフォンが設置されています。カウンター直結となっていますから、迷路に迷った人や本を探し出せない人はこれで助けを呼べば店員が助けてくれるのでしょう。これはなかなかいいサービスですね。
さらに周回通路で文庫ゾーンを抜けて、旅行書・美術書ゾーンへ。ここまで来ると什器のお遊びもかなり激しいものになっています。
うわー、棚が段段になっているー。これはPAGEONEにもなかったので、いまじんオリジナルですね。やるなぁ。
さて、このいまじんですが、什器以外にもいろいろと面白いことをやっていました。「ジャケコレ」と称してお客さんからブックカバーのデザインを募集し、それを採用して常時50種類ぐらいのデザインからブックカバーを選ぶことが出来るようになっている企画など、地域密着型の書店として、非常に有効かつ参考になる販促だと思います。パクらせていただきます。またコミック売場には「立ち読みコーナー」という変な棚が。何かと思えば、1巻ばかりを集めた棚が4スパンぐらい続いていて、ここの棚の本が試し読みできるようになっているんですね。へぇー。棚自体は微妙ですが、企画自体は面白いと思います。
その他入口脇に愛知万博の押井守の展示で使われた人形を1体20万円で販売していたり、文芸社のブースがあって「あなたの原稿、本にします」商談会をやっていたり、読み聞かせ会を実施していたり、とイベントも豊富。たちばな出版の占いイベントもきっと近いうちに実施されることでしょう。なかなかアイデアあふれる挑戦的な店ですね。
ただ、これだけ野心的な店であるにもかかわらず、割と全体的には「うまくまとまっちゃったね」という印象しか得られないのはちょと残念かな。総合評価80点。
追記 ブログもお店でやってるみたいです。(http://www.books-imagine.com/blog/toda/)いいですね。こういうの。その中で読んでめちゃ驚いたのですが、この店ロボモップを放し飼いにしてお掃除しているらしいこと(http://books-imagine.com/blog/toda/archives/2005/11/post_7.html)すごい。目からウロコ。こんなこと考えたこともなかった。掃除の人件費いらないよ確かに。3台あるらしい。