冠婚葬祭のひみつ (岩波新書)

冠婚葬祭のひみつ (岩波新書)

最近日本人のライフスタイルを研究する本に興味があって、購入したのですが、あら斎藤美奈子じゃないですか。岩波新書の著者紹介欄でも「文芸評論家」になっていて、最近すっかり毒舌書評家という評価が定着した観がありますが、本職はこっちのほうだったはず。面白くないわけがありません。
さて、本書はいわゆる「冠婚葬祭」の本質を鋭くえぐる本なのであります。本書では日本における結婚式のありようや葬式のありようを百年間分丹念に追っています。すると当然ながら百年前の結婚式とか葬式は今とは全然違うわけで、例えば葬式なんてのは、お寺とは関係なかったりするし昔は戒名とか存在しなかったりするわけなんです。ところが現在書店では冠婚葬祭のマニュアル本が死ぬほど刊行されていて、一つ一つの本に、「戒名は○○居士だと相場がいくらで○○院だと格が上になります」みたいなことが平気で書いてある。この冠婚葬祭本に書かれている「伝統的なしきたり」って何なの?100年前にはなかったその「伝統」って結局何なの?という鋭いツッコミが全編を支配する目からウロコ本です。
結論から言うと、現在通用しているしきたりとかマナーとかは、ある一人の天才(塩月弥栄子)によって創作されたものだった、ということがこの本を読むと分かるわけですけど、これらの冠婚葬祭本にかかれた「伝統的なしきたり」とか「マナー」とかが、いつ誕生したものなのか、なぜ誕生したのか、時代的にどういう意味があるのか?が非常に社会学的に明解に説明されていて非常に面白い本でした。いやぁ奥が深いですねー。評価A−