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秒速5センチメートル 通常版 [DVD]

いまさらなんですが、観ました。新海さんの作品は、背景が美しいことで有名なのですが、今回もその実力がいかんなく発揮されています。アニメ界のクリスチャン・ラッセンといわれるだけあります。
初めてストーリーの機軸にＳＦ要素が入ってこなかった今作品では、ライトノベル色が弱まり、そしてボーイミーツガールがハッピーエンドにならないという意味において、新海さんの「脱オタク」への意気込みが伝わってくるものとなりました。第２話の種子島のカナに興味を示さず、第３話でアカリがふりむいてくれるだろう、という淡い期待を抱く主人公は、自意識が強くて大人になりきれないオタクの少年そのもの。対して「あの頃はお互いこどもだったなぁ」とあっさり独白するアカリ。とても対照的です。過去二作のライトノベル的ストーリー展開を期待すると、裏切られる映画なので、ちょっと物足りないなーと思った人も多かったのではないでしょうか。
私はこれを観て、思わず「恋恋風塵」という映画を思い出してしまいました。侯孝賢監督の傑作で、非常に美しく、かつ悲しい映画です。この秒速５センチメートルでなんか物足りないなーと思われた方は、「恋恋風塵」を見てみてください。多分、何が足りなかったのか、わかるのではないかと思います。私はこの映画を観たとき、ショックで寝込みました。あの頃はまだこどもだったなぁ…。

恋恋風塵 [DVD]