花まんま (文春文庫)

花まんま (文春文庫)

昭和三十年から四十年代の大阪の下町を舞台に描くノスタルジックな怪奇譚。直木賞受賞作です。
全六篇の怪奇短編集なのですが、幻想的で美しいものから、思わず笑ってしまうお話、ダークで救いの無い話まで、その一つ一つの完成度はとても高いです。個人的に気に入っているのは、「トカビの夜」と「送りん婆」なのですが、特に最初の「トカビの夜」は懐かしく切なく、涙無しには読めない傑作です。著者の朱川湊人さんと私は十歳年が違うのですが、ここに描かれているノスタルジックな大阪の街は、何とかギリギリわかる範囲。昔宮本輝にはまったという方、読んでみてはいかがでしょうか。評価B+