浅田家

浅田家

私の古い友人に、写真研究家をやっている小林美香さんという人がいる。浅田政志さんという写真家の存在は、その彼女の書いた雑誌の記事で読んで知ったのだったが、今日寄った有隣堂梅佳代さんの新作の隣にこの本が積んであるのを見て、それを思い出した。
第32回木村伊兵衛賞の最終選考まで残ったこの「浅田家」がどんな写真集なのかというのは、私が語るよりかは実際見ていただいたほうがよいだろう。ご本人のサイトでその写真がちょっと見られるようになっている。
http://www.asadamasashi.com/

実験室で研究を行う研究者たち、繁盛する床屋夫婦と客、F1レーサーとクルー、海女など。演じるのは、浅田政志と父母、兄の四人。
浅田政志は自身の家族に色々なシチュエーションを演じさせ、「浅田家」と題した写真を撮り続けている。セルフタイマーによって撮影された作品は、 1枚1枚の状況に隠された物語を感じさせる。現在、浅田自身は東京在住。撮影は実家のある三重県で行われている。共通の歴史を積み重ねてきた 家族が、シチュエーションの中で思い思いの「演技」をする。新作を集めた本書には、家族のオフショットともいうべき、温泉を楽しむ、夕暮れにたたず む、眠る「家族」が写し出され、コミカルな世界に込められた家族の温かさがしみじみと伝わってくる内容となっている。

「過剰に家族写真」することで描かれるメタな家族像が、笑いの中に家族の本質を浮かび上がらせてくれる。
作品自体もそうなんだけど、最初撮影を嫌がっていたっぽい家族が、だんだんノリノリになっていく過程が垣間見えるのが笑えて面白い。