九十九怪談 第一夜

九十九怪談 第一夜

平山夢明の「超怖い話」シリーズが、本当に恐怖を覚える「怖い」怪談や、寒気を覚える「グロイ」怪談ばかりだったのに対して、木原氏の蒐集されてくる怪談は、一風変わっているように思います。その傾向は「新耳袋」シリーズのときからそうだったのですが、この「九十九怪談」はさらにその傾向が顕著。
幽霊が現れても怖がらないどころか、家族全員で面白がったり(44話「加湿器」)、そもそも幽霊が出てこないのにやたらに怖い話があったり(39話「引越し挨拶」28話「妊婦」41話「シール」)、幽霊の世界も大変なんだなーと笑えてしまう話(30話「追っかけ」)、ファンタジー小説としか思えない話(15話「キャッチボール」)、光景があまりにもシュールすぎて意味不明な話(19話「白無垢」51話「大仏様」)など、全然怖くないけどマニアックな怪談レベルとしては、かなり高い逸品揃いで、満足でした。
特に今回は「泣ける怪談」が多く、83話の「同窓会」、88話の「黒枠記事」、最後の「のんちゃん」の話などは乙一実話版並みに切ない話でした。
つまり、この本は怖さを期待して購入されると、確実に期待を裏切られる本だと言えますのでご注意を。怪談を恐怖物語だけだと思っていない怪談上級者向け(?)の本だと思います。個人的には割とお気に入り。評価B+